シトルリンを含むスイカの効能(2)体脂肪低減とアテローム性動脈硬化軽減|株式会社シクロケムバイオ
株式会社シクロケムバイオ
日本語|English
研究情報
今、注目していること
2020.6.23 掲載

シトルリンを含むスイカの効能(2)体脂肪低減とアテローム性動脈硬化軽減

前回はシトルリンを含むスイカの効能の(1)として「スポーツパフォーマンスの向上」を取り上げました。今回は「体脂肪の低減とアテローム性動脈硬化の予防効果」に関する論文を紹介します。

Citrullus lanatus `Sentinel' (Watermelon) Extract Reduces Atherosclerosis in LDL Receptor Deficient Mice(スイカ(センチネル)抽出物によるLDL受容体欠損マウスのアテローム性動脈硬化の軽減)
Poduri A. et al., J Nutr Biochem. 2013 May; 24(5): 882–886.

スイカを食すると、スイカに含まれるシトルリンの一酸化窒素(NO)の放出促進によって血管拡張、抗酸化、抗炎症などの作用を介して内皮機能不全の改善や大動脈血圧の低下などの心血管疾患に対する予防効果のあることが知られています。しかし、これまでにアテローム性動脈硬化症に対する直接的な影響は確認されていませんでした。そこで、この研究報告では、スイカ抽出物の経口投与がLDL受容体欠損マウスのアテローム性動脈硬化症に及ぼす影響について調べています。尚、LDL受容体はLDLコレステロールの体内の量を調節する働きがあるのですが、LDL受容体が欠損するとLDLコレステロール量が増加してしまいますので高LDLコレステロール血症となることがわかっています。

6週齢のLDL受容体欠損マウスに対して、スイカ抽出物群(n = 10)は、果肉・果皮・種子を圧搾しろ過しシトルリン含有量が20~30mg/gのスイカ抽出物を2%含む水溶液を13週間、自由に摂取させています。対照群(n = 8)はスイカ抽出物群と炭水化物量(フルクトース・グルコース・スクロース・マルトデキストリン)を同じにした水溶液を、同様に13週間、自由に摂取させています。水溶液を与え始めて1週間後に飽和脂肪+コレステロール食(乳脂肪21%wt/wt、0.2%wt/wt)を12週間与えています。では、検討結果です。

まず、除脂肪体重(LBM)ですが、大変興味深い結果が得られています。LBMとは脂肪を除いた体重のことで筋肉の他に骨・内臓・血液を含むのですが、主に筋肉を示します。したがって、LBMを調べることによって脂肪減少の際に筋肉は維持できているかどうかを確認できます。

図1. 除脂肪体重(LBM)とは
図1. 除脂肪体重(LBM)とは

体重は、2群ともに最初の7週まで、約1.8g/週と着実に増えていきますが、8週から対照群(1.6g/週)と比較して、スイカ抽出物群(1.1g/週)は大幅に増加率が減少しました。一方、LBMはスイカ抽出物群と対照群に差はなく、脂肪量には顕著な差が確認されました。つまり、スイカ抽出物群の脂肪量は対照群と比較して低いものの筋肉量はほぼ同等であることが判ります。この結果から、肥満患者だけでなく、アスリートや高齢者の筋肉維持や補強にスイカが効果的であることが明らかです。

図2. スイカ抽出物の体重と脂肪量の低減効果
図2. スイカ抽出物の体重と脂肪量の低減効果

次に、各群における弓部と胸部大動脈におけるアテローム性動脈硬化病変領域を調べています。どちらの部位に対しても対照群と比較し、スイカ抽出物群で大幅に低いことが判ります。この結果は、スイカにはアテローム性動脈硬化の軽減作用のあることが示唆されます。

図3. スイカ抽出物の大動脈における病変領域の減少効果
図3. スイカ抽出物の大動脈における病変領域の減少効果

最後に、スイカに抗炎症作用があるかどうかを検討しています。スイカ抽出物群は対照群と比較すると、炎症を誘発するサイトカインMCP-1とIFN-γの血漿中濃度は大幅に低減し、その一方で、抗炎症性のサイトカインであるIL-10は大幅に増加することを明らかとしています。

図4. スイカ抽出物の各種サイトカインへの影響
図4. スイカ抽出物の各種サイトカインへの影響

以上、スイカ抽出物は筋肉を維持しながら脂肪を低減し、アテローム性動脈硬化の病変部位を減少させ、抗炎症作用を有するという心血管疾患の予防に有効な機能性食品であることが判明しています。