キウイフルーツで睡眠障害を改善し便秘(過敏性腸症候群)を治す
キウイフルーツは『フルーツの王様』として様々な健康増進効果のあることを既に何度か取り上げています。特徴的なキウイフルーツの栄養成分の中で水溶性食物繊維のアラビキシランにはプレバイオティックスとしてビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の増殖作用があり、同じく水溶性食物繊維として含有しているペクチンは酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸に変換されて、腸管内を産生環境にして善玉菌優位な状態にするなど、腸内環境改善、便秘改善に有効であることが示されている論文を紹介しています。
難消化性αオリゴ糖を用いるフレッシュパウダーの候補(2)キウイフルーツ
キウイフルーツに含まれるこれらの水溶性食物繊維が過敏性腸症候群の一つの症状である便秘改善に有効であることは確かなのですが、キウイフルーツには過敏性腸症候群を改善するために有効なもう一つの成分があります。それはセロトニンです。キウイフルーツのセロトニンが睡眠障害を解消し便秘を改善するのです。
私たちは、不安や緊張が続く仕事のストレスや過労で、うつ状態となり睡眠障害を患います。脳においてはこのような生活習慣が原因で自律神経が乱れることから大腸では蠕動亢進で下痢や攣縮で便秘を引き起こすことが分かっています。また逆に、食生活の乱れが原因で大腸における腸内環境が悪化すると過敏性腸症候群、つまり、下痢や便秘の状態が続くと、自律神経は乱れ、自律神経失調症を患うこととなります。このように脳と大腸は密接な相関関係にあるのです。
ここでは、セロトニンを含むキウイフルーツによる睡眠障害の改善に関する台北医科大学の研究報告を紹介します。
Effect of Kiwifruit consumption on sleep quality in adults with sleep problems
Hsiao-Han Lin et al., Asia Pac J Clin Nutr. 20(2): 169-74 (2011)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21669584/
睡眠障害を抱えた20歳から55歳までの被験者24名(男性2名、女性22名)を対象に4週間、毎晩就寝1時間前にキウイフルーツ2つを摂取しました。試験デザインを(図2)に示します。
睡眠日誌、ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)スコア、アンチグラフィー時計によって、睡眠開始後の覚醒時間、起床時間、総睡眠時間、介入前後の睡眠効率などの睡眠の質を主観的に、そして、客観的にパラメーター評価しています。尚、ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)は、1ヶ月間の時間間隔で睡眠の質を評価する自己報告型のアンケートです。また、アンチグラフィーとは無拘束で非利き腕や足首に時計型加速度センサーをつけることで、自動的に人間の活動/休止リズムサイクルを記録し、査定する方法です。
表1. 4週間の食事介入期間後の数値変化(N = 24)
パラメーター | ベースライン | 介入後 | P値 |
---|---|---|---|
睡眠日誌より | |||
入眠後の起きている時間(分) | 18.9±4.31 | 12.8±3.49 | 0.002* |
入眠までに要した時間(分) | 34.3±3.86 | 20.4±3.53 | < 0.001* |
睡眠時間(分) | 354.5±17.1 | 395.3±17.4 | 0.007* |
睡眠効率(%) | 86.9±1.94 | 91.2±1.53 | 0.001* |
PSQIスコア | 10.4±0.69 | 6.00±0.45 | < 0.001* |
アンチグラフィー時計より | |||
入眠後の起きている時間(分) | 22.2±4.98 | 16.8±3.41 | 0.119 |
入眠までに要した時間(分) | 16.7±2.80 | 10.1±1.77 | 0.089 |
睡眠時間(分) | 361.8±14.9 | 416.6±16.2 | < 0.001* |
睡眠効率(%) | 93.9±1.03 | 95.9±0.67 | 0.005* |
有意差判定:Wilcoxon signed rank test P < 0.05
4週間のキウイフルーツ摂取後、PSQIスコアは42.4%、入眠後の覚醒時間は28.9%、入眠潜時(覚醒状態から眠りに入るまでの所要時間)は35.4%と顕著に減少し、睡眠時間は13.4%、睡眠効率は4.41%と大幅に増加しています。
これまでにも、多くの研究によって、キウイフルーツには多くの健康増進のための成分が含まれていることは報告されていますが、その中でも、抗酸化物質とセロトニンが睡眠障害の治療に有益である可能性があるとされていましたが、この研究報告でそれが明らかにされています。この睡眠障害の修復が脳における自律神経を正常化し、結果、過敏性腸症候群の便秘改善にも関わっていると考えられます。