植物色素アントシアニンについて(1)アントシアニンの色と健康機能性|株式会社シクロケムバイオ
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2020.09.09 掲載

植物色素アントシアニンについて(1)アントシアニンの色と健康機能性

このところ当社のシクロデキストリンの応用研究の対象として、植物に含まれるフラボノイド系の天然色素であるアントシアニンについて取り上げられることが多くなっていますので、今回は最近のアントシアニンに関わる注目すべき研究報告について紹介していきます。その前に(1)では、植物色素のアントシアニンとは、いったいどういったものなのか、分かりやすく解説しておきます。

アントシアニンはブドウやリンゴ、ブルーベリー、チェリーなどの果実、ナスやシソ、まめ種子、紫キャベツ、黒米などの赤色や紫色の色素成分であり、また、花の色も、その多くはアントシアニンによる色です。たとえば、アジサイの場合、青色、紫色、赤色と色鮮やかに様々な色がありますが、これは、すべてアントシアニンの色なのです。土壌が酸性なのかアルカリ性なのかによってアジサイの花の色は変化します。アルカリ性、中性、酸性の場合の化学構造は少し異なり、それぞれ、青色、紫色、赤色を呈しているのです。

もう少し、詳しく説明しますと、酸性で赤色を示すのは、赤以外の光(青と緑の短波長の光)を吸収して長波長の赤の光を反射しているからなのですが、中性になって水中のH+が減るとアントシアニン色素のH+も無くなります。そうすると、=O(カルボニル)形成で二重結合が連続して長波長の緑の光を吸収して紫色となります。アルカリ性になると水酸基(OH基)がO-となり、さらに長波長の緑と赤(黄色)の光を吸収して青色となるのです。

図1. アルカリ性、中性、酸性におけるアントシアニンの色変化
図1. アルカリ性、中性、酸性におけるアントシアニンの色変化

赤キャベツの煮汁は紫色ですが、酢を入れると赤色に変わるのも同じ原理です。

食品化学分野においては、これまでにアントシアニンが天然の着色料として応用研究され、食用色素としても既に様々なタイプのものが開発され、実際に食品の着色に利用されています。

しかしながら、汎用の食用色素と比べて経済性に乏しく、利用される食品用途は限られていました。そのような中、最近では、アントシアニンは色素としての利用だけではなく、食品に含まれる生理機能成分として、すなわち、健康機能素材としての利用に研究は進展してきています。

これまでにアントシアニンには下記のような効能効果が知られています。

アントシアニンと言えば眼精疲労回復のイメージが強く、皆さんご存知の方も多いと思われますので、ここでは、抗糖尿病作用の作用機序について簡単に解説しておきます。

アントシアニンの摂取は2型糖尿病モデルマウスを用いた試験において血糖値の上昇抑制とインスリン感受性の改善が下記論文によって明らかとなっています。

Dietary anthocyanin-rich bilberry extract ameliorates hyperglycemia and insulin sensitivity via activation of AMP-activated protein kinase in diabetic mice.
M. Takikawa et al., J. Nutr. 140, 527-533(2010)

この論文ではアントシアニンが2型糖尿病モデルマウス(KKAy)において血糖値の上昇を抑制し、インスリン感受性を改善したとの結果が示されていますが、ここではその内容ではなく、作用メカニズムについてのみ触れておきます。

アントシアニン含有ビルベリー抽出物の摂取は、骨格筋、白色脂肪組織、肝臓においてAMPKを活性化します。このAMPK活性化は、骨格筋や白色脂肪組織においてGLUT4の発現を上昇させ、肝臓においては糖新生を抑えます。一方、脂質代謝においても、脂肪の利用を促進するため、血糖値の上昇を抑制し、インスリン感受性の増加をもたらすようです。

図2. アントシアニン含有ブルーベリー抽出物の糖尿病予防・抑制のメカニズム
図2. アントシアニン含有ブルーベリー抽出物の糖尿病予防・抑制のメカニズム