テニスを生涯スポーツとすると平均寿命は健康的に延長する
2018年9月に『Mayo Clinic Proceedings』誌に掲載された論文ではコペンハーゲン市の8,577人の25年間に渡る調査で運動習慣のない人と運動習慣のある人を比較していて、平均寿命に差があり、運動をする人は平均寿命の延長が観られ、その中でも、テニスが9.7年と最も延長することを明らかとしています。
今回は2020年に『International Journal of Exercise Science』誌に報告されたミシシッピ州立大学のスプリングらの研究報告を紹介します。タイトルは「Long-term Tennis Participation and Health Outcomes: An Investigation of “Lifetime” Activities(長期的なテニスへの参加と健康成果:「生涯」活動の調査)」です。
「生涯スポーツ」とは生涯に渡って参加できるスポーツや余暇活動で、自転車、ゴルフ、ジョギングなどの活動です。テニスも生涯のすべての年齢で参加できるので「生涯スポーツ」の1つと言えます。
これまでの上述のような研究でテニスは平均寿命を最も延長できるスポーツであることが知られていますので、この研究では『テニスが如何に健康維持に役立つスポーツか?』について調査しています。つまり、研究報告では、テニスが他のスポーツに比べ、単に平均寿命を延ばすだけではなく、テニスの成人における健康へ与える潜在的な影響を評価することで、特に45歳以上の成人のテニスへの参加の健康維持への有効を示しています。
この研究の調査への参加者は国際テニス連盟に所属する142名の成人であり、年齢は21歳から72歳まで平均47.6歳で、その内、89名が45歳以上でした。調査事項は、参加者の身体活動レベルを知るための国際身体活動アンケート(IPAQ)、健康関連のリスク行動に関するデータを収集するための行動危険因子監視システム(BRFSS)、人生全体の満足度を判断するライフスケール満足度(SWLS)、国際テニス連盟(ITF)が作成したテニスへの関与に関する7つの質問です。比較対象に「一般集団データ」として2011年に米国の全国電話調査のBRFSSに回答した人々のデータを用いています。
表. 人口統計
サンプル全体 (n = 142) |
サブサンプル (45歳以上、n = 89) |
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歳 | 47.60 ± 13.53 | 56.67 ± 6.67 |
身長(cm) | 175 ± 10 | 175 ± 10 |
体重(kg) | 77.07 ± 15.73 | 79.47 ± 17.17 |
BMI(kg/m2) | 25.06 ± 3.64 | 25.82 ± 3.96 |
サンプル全体は、参加者の75%以上が、過去10年間の定期的なテニスに参加(週2回以上)していることを報告しており、サブサンプル(45歳以上)では参加者の80.2%以上が、過去10年間の定期的なテニスに参加(週2回以上)していることを報告しています。
では、まずテニスをしている人(対象:サンプル全体)と一般集団データ(BRFSS)の肥満の割合の比較です。テニスに参加している人の肥満の割合が有意(P = 0.0001)に低いことが分かります。
次に、テニスをしている人(対象:サブサンプル45歳以上)と一般集団データ(BRFSS)の冠動脈性心疾患の割合の比較です。45歳以上のテニスをしている人の冠動脈性心疾患の既往歴がある割合が有意(P = 0.003)に低いことが判ります。図では示していませんが、さらに、テニスをしている人の既往歴がある割合も有意(P = 0.0001)に低いことも分かっています。
次に、テニスをしている人(対象:サブサンプル45歳以上)と一般集団データ(BRFSS)の糖尿病の割合の比較です。45歳以上のテニスをしている人で糖尿病をもっている人の割合が有意(P = 0.049)に低いことが分かります。
運動不足が心血管疾患(CVD)や糖尿病、肥満といった慢性疾患の危険因子であることはよく知られていますが、この研究結果によって、テニスをすることが、これらの疾患の予防に有効であることが示されています。このように、生涯スポーツ、特にテニスが、多くの年齢層で身体活動を達成し、より健康的な生活を促進するための手段である可能性が示されています。