ヒトの腸内酪酸産生に対する運動の影響|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
今、注目していること

ヒトの腸内酪酸産生に対する運動の影響

科学の進歩に伴って腸内環境の研究が進む中、酪酸の働きが注目されてきています。酪酸が腸内に増加すれば、以下の記事で紹介したリーキーガットの問題も解決してくれることが分かっています。そして、酪酸のリーキーガットの修復作用によってアレルギー疾患の予防治癒効果について説明しています。
腸管バリア機能不全リーキーガットを改善するためのαオリゴ糖

また、水溶性の難消化性オリゴ糖は腸内で酪酸に変換され、善玉菌支配となり、腸内環境が改善されることも以前紹介しました。

その酪酸産生に効果のある難消化性オリゴ糖にはフルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、そして、難消化性αオリゴ糖などがあるのですが、その中でも一般に「おなかの調子を整える」としてよく知られている難消化性オリゴ糖が乳果オリゴ糖です。以下の記事では、乳果オリゴ糖と難消化性αオリゴ糖の酪酸産生に対する比較試験結果を紹介し、難消化性αオリゴ糖の効果を示しています。
腸内でαオリゴ糖から作られる短鎖脂肪酸の酪酸が善玉菌を増やす理由

腸内の酪酸産生には難消化性αオリゴ糖の摂取が有効なのですが、αオリゴ糖摂取と同様に有酸素運動をすることが腸内の酪酸を増やすのに有効であることを明らかとした論文を紹介しておきます。

イリノイ大学のアレンらの研究グループがExercise Alters Gut Microbiota Composition and function in Lean and Obese Human(運動がやせ型と肥満型のヒトの腸内環境と機能を変える)というタイトルで2018年にMedicine & Science in Sports and Exercise50(4): 747(2018)に発表した論文です。

今回は酪酸産生に関与する部分のみの紹介です。6週間に渡って週に3回、ウォーキングなどの軽い有酸素運動を60分間行うことで、腸内の酪酸菌が増加することが明らかとなっています。そして、その増加は肥満型の人より痩せた人の方が顕著でした。そして、有酸素運動を6週間行った後に6週間、運動をしないと再び腸内酪酸菌は減少していました。運動習慣は良い腸内環境を維持するために有効だということが分かります。

図. 有酸素運動で腸内の酪酸量は増加する
図. 有酸素運動で腸内の酪酸量は増加する

このように酪酸菌産生によって腸内環境を整え、アレルギー疾患や過敏性大腸炎などの疾患を予防するには水溶性食物繊維、特に、難消化性αオリゴ糖を摂取する食習慣とともに運動習慣を身に付けるようにしましょう。