コロナ感染対策には難消化性オリゴ糖の摂取がお薦め|株式会社シクロケムバイオ
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2021.01.21 掲載

コロナ感染対策には難消化性オリゴ糖の摂取がお薦め

前回のタイトルは『コロナ感染対策にはヒトケミカルの摂取がお薦め』でした。今回はその“ヒトケミカル”を“難消化性オリゴ糖”に変えただけなのですが、その根拠はヒトケミカルも難消化性オリゴ糖もどちらも摂取すると唾液の免疫グロブリン(IgA)濃度を高め、新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、コロナ感染症という)のリスク低減になることが分かってきたからです。

尚、前回はコエンザイムQ10(CoQ10)を摂取することで唾液中のIgA分泌速度が増加する論文を紹介しましたが、CoQ10摂取は唾液そのものの分泌量を改善して感染症のみならず、歯周病、口臭、上部消化管障害などの原因となるドライマウスの対策になるといった研究報告もあることを付け加えておきます。
唾液分泌量を改善するCoQ10

コロナ感染症の症状は多彩で、無症状感染者から重症患者、死に至るまで幅が広いのが特徴で、この傾向はSARSに似ています。ただ、新型コロナとSARSには感染する部位に違いがあります。ウイルスはS蛋白を介してACE2という受容体を発現している細胞に感染します。このACE2を発現している細胞はさまざまな臓器に存在しているのですが、発現の程度が臓器によって異なっていて、上気道(鼻やのど)では弱く、肺や小腸の上皮細胞に特に強く発現していることが分かっています。そのため、SARSは上気道では感染せず、肺と小腸で感染するのです。一方、新型コロナはACE2との結合力が強いため、上気道でも感染してしまうため、SARSは大きく流行せず収束したにもかかわらず、新型コロナは大流行となっていると考えられます。なので、上気道でのコロナ感染対策、つまり、水際対策(ウイルスが入ってくる場所での対策)が必要なのです。そして、十分な量のIgAを含有する唾液はウイルスなどの病原体の侵入を水際(上気道)で防ぐ役目を担っていて、その先の粘膜臓器への感染をいち早く第一線で防止しています。

神奈川歯科大学の山本らの研究グループはこれまでに難消化性糖類を摂取すると大腸内で酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸産生によって唾液中のIgAが増加することを見出しています。その短鎖脂肪酸産生によるIgA増加のメカニズムは、短鎖脂肪酸のレセプターであるG-Protein Coupled Receptor 41(GPR41)とG-Protein Coupled Receptor 43(GPR43)が交感神経節に発現していることから、短鎖脂肪酸がGPR41、GPR43を介して自律神経が刺激されて、唾液中IgAが増加すると考えられています。

図1. 難消化性オリゴ糖摂取による唾液IgA分泌
図1. 難消化性オリゴ糖摂取による唾液IgA分泌

山本らの研究グループの論文を以下に紹介しておきます。

The Salivary IgA Flow Rate Is Increased by High Concentrations of Short-Chain Fatty Acids in the Cecum of Rats Ingesting Fructooligosaccharides
Y. Yamamoto et al., Nutrients 2016, 8, 500; doi: 10.3390/nu8080500

ラットに難消化性オリゴ糖である5%フラクトオリゴ糖(FOS)を含む食餌を摂取させ、摂取後1週目、4週目、8週目の時点での唾液中のIgA量を検討しています。その結果、FOSの摂取は唾液中のIgA濃度を増加させ、IgA流量(分泌速度)を増加させることが分かりました。

図2. 難消化性オリゴ糖(FOS)の摂取による唾液IgA分泌速度(顎下腺)
図2. 難消化性オリゴ糖(FOS)の摂取による唾液IgA分泌速度(顎下腺)

同時に、FOS摂取によって腸内の短鎖脂肪酸の特に酪酸濃度が増加することから、SCFAs濃度が増加する(P < 0.05)ことを確認しています。

表1. 難消化性オリゴ糖(FOS)の摂取による腸内における短鎖脂肪酸の増加
表1. 難消化性オリゴ糖(FOS)の摂取による腸内における短鎖脂肪酸の増加

このように前回のヒトケミカルの摂取による唾液中IgAの増加と同様にプレバイオティクスとして腸内において酪酸を産生する難消化性オリゴ糖も唾液中のIgAを増やす効果があるようです。難消化性オリゴ糖とヒトケミカルを摂取して上気道による新型コロナの感染を予防しましょう。