還元型CoQ10包接体の吸収性とコロナ後遺症の改善について(1)各社還元型CoQ10サプリメントの溶解性比較
酸化型のCoQ10のγ-シクロデキストリン(CD)包接体(以下、CoQ10包接体)の吸収性評価については、既にヒト試験が実施されており、CoQ10の原末の結晶セルロース製剤と包接体との比較において18倍吸収性の向上することが確認されています。
そして、このCoQ10包接体の吸収性向上メカニズムも解明され、小腸液に含まれる胆汁酸が関与していることが明らかとされています。CoQ10包接体を水に加えるとほとんど溶解せず分散状態となり、その分散液中のCoQ10濃度は僅か2.9μg/mLです。しかし、その分散液にタウロコール酸(胆汁酸)を加えただけで水溶液中のCoQ10濃度は急激に約400倍の1146μg/mLに上昇します。これは、様々な検討から、胆汁酸とγ-CDの相性がCoQ10よりも良いため、γ-CDに包接されているゲスト分子のCoQ10は胆汁酸と入れ替わり、γ-CDから解離したCoQ10は1分子1分子が胆汁酸に囲まれた分子ミセルを形成し、その結果、水への溶解度が急激に高まるからと結論付けています。
そして、更なる脂溶性物質の吸収性メカニズム解明の検討によって、胆汁酸を含む人工腸液中においてCoQ10やクルクミンなどの脂溶性物質の溶解度が高まれば高まる程、生体への吸収性も高まるという正の相関のあることも確認されています。
そこで、還元型CoQ10包接体を作製し、原料の還元型CoQ10(未包接体)との人工腸液中の還元型CoQ10の溶解度の比較、および、油脂乳化剤などで吸収性を改善したソフトカプセルや錠剤などの国内5社の還元型CoQ10サプリメントとの人工腸液中の還元型CoQ10の溶解度の比較を検討しています。
検討方法:CoQ10濃度が2mg/mLになるように試料を食後人工腸液に加え(原料と包接体:30mg CoQ10/15mL、5社のサプリメント:100mg CoQ10/50mL)、37℃・100rpmで振とうした。1、2、4時間後に一部を抜き取り、0.2μmフィルターにて濾過し、HPLCにてCoQ10濃度を測定した。(原料と包接体:N=1、サプリメント:N=2)
その結果、5社の中ではN社のサプリメントが最も人工腸液中の溶解度が上昇していましたが、N社のサプリメントよりも包接体はさらに顕著にCoQ10濃度は上昇していました。
そして、各試料を人工腸液に加えた4時間後のCoQ10濃度を比較したところ、5社の中で最も高いCoQ10濃度(0.2mg/mL)を示したN社のサプリメントに比べ、還元型CoQ10包接体は5倍のCoQ10濃度(1.0mg/mL)でした。そして、S社とD社のサプリメントの場合は、残念ながら、CoQ10濃度は0mg/mLで検出限界以下でしたので、還元型CoQ10は生体内に吸収されないものと考えられます。