第69回 シクロデキストリンと抗酸化物質を併用したクリルオイルの安定性改善
本研究成果は2014年9月12日(金)、第31回シクロデキストリンシンポジウム(9/11~12、島根県民会館(島根)にて開催)において発表されました。
背景
当社ではシクロデキストリン(CD)の包接機能を利用して、機能性成分の水溶性、安定性、バイオアベイラビィティなどを向上させる技術を有しております。それらの成果は化粧品、食品等の様々な分野で広く利用されています。近年、DHAやEPAといったω3系不飽和脂肪酸は抗メタボリックシンドローム作用、脳機能改善効果、心疾患予防が期待できる成分として注目されています。我々はω3系不飽和脂肪酸含有油をCDで包接することで安定な粉末の作成に成功しています(※詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第1回」、「第35回」および「第51回」を参照して下さい)。
南極オキアミ由来の「クリルオイル(KO)」はリン脂質結合型のω3系不飽和脂肪酸を高含有しており、魚油と比べて吸収されやすいことから次世代型DHA・EPAオイルとして注目されています。しかしながらKO中の不飽和脂肪酸も魚油と同様に酸化し易く、またKOの場合にはその特有の臭気が問題点となっており、サプリメントや機能性飲料の開発のためには酸化安定性の向上および臭気の低減が課題とされています。そこで今回はKOの酸化安定性および臭気におけるCD包接の効果および、抗酸化物質の添加効果について報告します。
クリルオイルについて
クリルオイル(KO)とは?
- 世界で最も美しい水質を誇る南極海域に生息する『ナンキョクオキアミ』から抽出したオイル。
- リン脂質結合DHA・EPAを豊富に含み、抗酸化作用のあるアスタキサンチンも含有し、高い健康効果が期待できる。
期待できる効果
脳機能改善/認知症予防/心疾患予防/月経前症候群・更年期障害の緩和
魚油とクリルオイルとの違い
本検討の目的
クリルオイル含有製品の開発における課題
- 安定性:DHA・EPAなどの不飽和脂肪酸は酸化されやすい
- 臭気:クリルオイル特有の臭いに加えて、不飽和脂肪酸が酸化分解されると臭気が強くなる
→ 本研究では、シクロデキストリン(CD)と抗酸化物質によるクリルオイルの安定性向上・臭気低減を検討しました。
実験:KO-CD包接複合体の調製手順
実験:酸化安定性評価
→ KOの酸化安定性の向上にはCDによる包接複合体形成が有効
実験:臭気評価
手順
それぞれのサンプルにおいてクリルオイルが100mgになるように秤量し、50mlバイアル瓶に入れ、ふたを閉めた。
臭いを充満させるため、一晩静置した後、ハンディにおいモニターOMX-SR(神栄テクノロジー社)を使用して臭気強度を5分間測定し、強度の最高値をサンプルの臭気強度とした(n=3)。
→ KOの臭気はT3共存下でCD包接されることにより効果的に低減することがわかった。
まとめ
- KOの酸化安定性向上にはCDによる包接複合体形成が有効。
- KOの臭気はT3共存下でCD包接されることにより効果的に低減する。
↓
本検討から、シクロデキストリンおよびトコトリエノールが、クリルオイルの酸化安定性の向上および臭気の低減に有用であることが明らかとなりました。
これらの成果はクリルオイルを含有する新たなサプリメントやドリンクなどの開発に応用することができます。