第72回 脂溶性物質-γ-シクロデキストリン包接体の可溶化方法の拡張_②|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第72回 脂溶性物質-γ-シクロデキストリン包接体の可溶化方法の拡張_②

背景

当社ではシクロデキストリン(CD)の包接機能を利用して、機能性成分の水溶性、安定性、バイオアベイラビリティなどを向上させる技術を有しております。最近ではCDとある種の乳化剤を併用することでCoQ10、クルクミンといった特に脂溶性が高い物質でも水溶液を作成できる技術を確立し、それらの成果を化粧品、食品等の様々な分野で広く利用して頂いております(※詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第25回」、「第32回」、「第52回」を参照して下さい)。

今回は上記の可溶化技術をより広く利用していただくため、CDと組み合わせる乳化剤として、代表的な食品用乳化剤であるグリセリン脂肪酸エステルを用いたCoQ10の水溶化検討を行いました。

グリセリン脂肪酸エステル

本検討では、グリセリン脂肪酸エステルとして、HLB値が高いポリグリセリンラウリン酸エステルおよびポリグリセリンミリスチン酸エステルを用いました。

ポリグリセリンラウリン酸エステル、HLB値=17
ポリグリセリンミリスチン酸エステル、HLB値=16

HLB値:Hydrophile – Lipophile Balance。乳化剤がもつ親水性と親油性とのバランスを示す値。0から20まであり、HLB値が高い乳化剤ほど、脂溶性物質を水に溶けやすくする能力が高い。

実験

バイアル瓶に、2wt%ポリグリセリン脂肪酸エステル水溶液(10mL)を取り、70℃に加熱した。そこへCoQ10-γ-CD包接体(25mg)を少量ずつ加えながら、薬さじでよく撹拌した(20分間)。

結果

Fig. 1

ポリグリセリンミリスチン酸エステルを用いた場合ではCoQ10-γ-CD包接体は一部しか可溶化されなかった。
それに対し、ポリグリセリンラウリン酸エステルを用いた場合では、加えたCoQ10-γ-CD包接体は完全に溶解し、透明なCoQ10水溶液を得ることができた。
また、γ-CD包接体ではなく、CoQ10原末を用いた場合は同様の結果は得られず、溶け残りが観測された。

まとめ

CoQ10-γ-CD包接体を水溶化させられる乳化剤として、一般的な乳化剤でHLB値の高いポリグリセリンラウリン酸エステルを利用できることがわかった。

本研究成果は、高いバイオアベイラビリティを示す飲料などの開発に応用できます。