第93回 α-シクロデキストリン摂取によるカルシウムの吸収量の増加と骨強度の向上|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第93回 α-シクロデキストリン摂取によるカルシウムの吸収量の増加と骨強度の向上

概要

カルシウムをはじめとするミネラルは骨や歯の形成のみならず、全身の細胞の活動や神経伝達にも重要な栄養成分です。
腸内細菌が食物繊維や難消化性オリゴ糖を分解した際に産生される短鎖脂肪酸(SCFAs)は宿主に様々な健康増進効果をもたらすことが明らかにされています(図1)1)。その効果の一つとして、腸管内でSCFAs濃度が上昇すると腸管内のpHが低下し、それによりミネラルの溶解度が向上することで、ミネラルの吸収性向上が引き起こされることが知られています。
α-シクロデキストリン(α-CD)は難消化性かつ腸内細菌のエサとなる性質を持っています。実際に、当社ではこれまでにラットやマウスにおいて、α-CDの摂取が腸内細菌層を改善し、盲腸内のSCFAs量を増加させることを報告しています。(※詳しくは、当社ホームページの研究成果「第85回」および「第92回」を参照して下さい。)
 本研究ではα-CD摂取によるミネラルの吸収性向上を目的として、無繊維食と供にα-CDを摂取させたラットにおけるカルシウムの吸収量や骨への影響ついて、ラクトスクロース(LS)2)を比較対照として検討を行いました。

図1. 腸内細菌由来の短鎖脂肪酸の機能
図1. 腸内細菌由来の短鎖脂肪酸の機能

実験

4週齢の雄性SDラットを無繊維食(NF)群、5.5%α‐CD(α-CD)群、5.5%ラクトスクロース(LS)群、3群に分け、8週間飼育した。試験開始から45日目から3日間摂餌量の計測と糞便を採取した。餌及び糞便中から湿式灰化法でミネラル分を抽出し、カルシウムの測定を行った。摂取したカルシウム量と糞便中に排泄されたカルシウム量から、カルシウム吸収率を算出した。飼育終了後、イソフルラン麻酔下で解剖を行い、大腿骨を採取した。大腿骨の骨強度は骨強度/皮膚破断強度試験機(室町機械)で測定した。

結果と考察

カルシウムの吸収率はNF群で64%であったのに対し、α-CD群では85%、LS群は76%であり、α-CD摂取によるカルシウムの吸収率の向上が示された(図2)。

図2. カルシウムの吸収率
図2. カルシウムの吸収率

また、体重1gあたりの大腿骨重量はNF群で2.67mgであったのに対し、α-CD群では2.97mg、LS群は2.89mgであったことから、α-CD摂取による骨量の増加が示された(図3)。さらに最大荷重(骨強度)はNF群で104Nであったのに対し、α-CD群では127N、LS群は114Nであり、α-CD摂取による骨強度の向上が示された(図4)

図3. 大腿骨重量
図3. 大腿骨重量
図4. 大腿骨の骨強度
図4. 大腿骨の骨強度

まとめ

本研究から、α-CDの摂取によりカルシウムの吸収量の増加を介した骨量の増加および骨強度の向上効果が示されました。これまでにもα-CDの摂取効果として血中中性脂肪の低減や血糖値上昇抑制効果などが知られていることから、α-CDは新たな健康食品の開発において非常に有用な素材であることが示されました。
(※詳しくは、当社ホームページの研究成果「第6回」および「第42回」を参照して下さい。)

参考文献

1) Koh A., et al., Cell, 165:1332-1345 (2016).
2) 藤田ら 日本栄養・食糧学会誌, 52:343-348 (1999).