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その7. L-カルニチン

「脳機能改善のためのサプリメントに、なぜL-カルニチンが必要なのですか?」と、ある女性から、質問がありましたので、ご要望にお答えして、L-カルニチンの脳機能改善効果を付け加えさせて頂きます。L-カルニチンには、学習によって知識を高めなければならない年代の学習能力を向上させる作用とともに加齢による記憶障害を改善する作用を持っています。それらの作用がマウスの実験によって実証されているのです。

先ず、学習能力向上に関しては、脳の働きとL-カルニチンの関係を研究する東京都脳神経研究所が行った実験があります。L-カルニチンを与えたマウスと与えないマウスの迷路実験を行い、L-カルニチンを与えたマウスの学習能力が高まったという結果が出ています。

この研究結果をサポートする報告として、山梨大学Yasuiらのグループによる興味深い論文が2002年に出ていますので、ここでは、その内容を紹介します。L-カルニチンは学習能力の向上とともに老齢マウスの学習障害と記憶・認知傷害の双方を改善するようです。

その前に、アセチルL-カルニチン(ALC)と脳に関して触れておきます。L-カルニチンは、体の中でALCに変化します。このALCは脳に多く含まれており、脳内ALCが不足すると脳細胞は壊れやすくなるのです。人間の脳細胞は生まれてから日々、減っていく一方で、1日に何万という細胞が壊れています。ALCが不足するとこの脳細胞が壊れるスピードが速まり、認知症になりやすくなるわけです。L-カルニチンを摂取すれば、ALCが体内で合成され、認知症予防となります。特に、50歳を超えた人は1日に100mgは摂るべきであろうといわれています。

この実験は、ALCを長期投与による脳の脂質ヒドロペルオキシド量と老化促進モデルマウス(以下、SAMP8)の記憶障害に対する効果を検討したものです。

3週齢のマウスに対して、4ヶ月間に渡って、週に3回、腹腔内に食塩水かALCを投与しています。コントロール群として食塩水を投与した4ヶ月齢のSAMP8には学習障害・記憶障害が観られましたが、ALCを投与したマウスにおいては顕著な改善が観られました。また、脳内の脂質過酸化物量においてもコントロール群と比較して顕著な低下が確認されています。これらの結果はALCがSAMP8の脳組織にみられる脂質過酸化物の上昇を阻害することで細胞障害を改善し認知能力を高めていることが示唆されました。

学習・記憶障害に関するALCの効果の検討は受動的回避行動テストによって行われました。(受動的回避行動テストに関してはコラムをご参照ください。)Acquisition trialとは、最初に明るい部屋にマウスを放ち、そのマウスが暗い部屋に移ることを確認するものです。移動に要した時間を測定します。移動したらすぐにドアを閉め、電気ショックを与えます。次にRetention trialです。Retention trialとは電気ショックを経験させた後、如何に移動せず明るい部屋にいるかを検討するものです。Acquisition trial から24時間後、Retention trialとして、マウスを再び明るい部屋に放ち、その場にいる時間を測定しています。もし、マウスが180秒間移動しなければ、最高スコアとして180秒としています。

図1は、長期に渡ってALCをSAMP8マウスに投与した際の記憶障害の改善効果を検討したものです。100mg/kgと400mgのALCを投与したマウスは明らかにRetention trialの移動に要する時間はAcquisition trialの移動に要する時間に比べて、有意に長くなっており(P<0.01)、さらに、400mgのALCを投与したマウスは、食塩水を与えたグループのRetention trialの移動に要する時間と比べても有意に長くなっていました。(P<0.01)

図1. ALCをSAMP8マウスに投与した際の記憶障害の改善効果(** P<0.01, ++P<0.01)

次に、図2はSAMP8の脳組織の過酸化脂質レベルに対するALCの長期投与による変化を検討した結果です。ALCの長期投与によって脂質ヒドロペルオキシド量も食塩水投与群に比べて有意に低下することが明らかとなっています。(P<0.01)

図2. ALCをSAMP8マウスに投与した際の過酸化脂質低減効果(**P <0:01 vs. 食塩水投与グループ)

以上のように、脳で酸化ストレスによって発生する脂質過酸化物は脳細胞を崩壊させるのですが、L-カルニチンはその脳内の脂質過酸化物の量を低減し、学習障害、記憶障害を改善させることが明らかとなっています。

コラム 受動的回避行動テスト

前述の明暗箱の床に電気ショックがかかるワイヤーグリッドを設置した装置を用いる。明箱に入れられたマウスは、暗い環境を好むためやがて暗箱に進入する。完全に身体が進入した後にマウスが嫌悪する程度の電気ショックをかけるとマウスはあわてて明箱に戻る。そこで飼育ケージに戻す。翌日、電気ショック機能をオフにした同じ装置の明箱に前日と同様にマウスを入れる。ここで、マウスが本来好むはずの暗箱に侵入しなければ、そのアクションをおこさないことで電気ショックを回避したことになる(受動的回避行動とよばれる)。初日の暗箱に入るまでの時間と二日目の時間を比較することで、回避学習能力を検討することができる。

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