ヒトケミカルとフィトケミカルでケイジング ~老いないカラダを作る~(1)|株式会社シクロケムバイオ
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ヒトケミカルとフィトケミカルでケイジング ~老いないカラダを作る~(1)

私は過去に「ヒトケミカルで健康的なエイジング、K-エイジング」というシリーズで、ヒトケミカル(CoQ10、R-αリポ酸、L-カルニチン)という、ヒトの生体内で作られている生体を維持するための機能性成分を摂取することが、健康的にエイジングするためには必要なことを説明しました。

この度、高齢化社会において、フィトケミカルよりもヒトケミカルの摂取が如何に重要であるかをしっかりと理解してもらうため、誰にでも分りやすい「ヒトケミカルで老いないカラダを作る」という本を作成することとしました。

これまでの説明の繰り返しになりますが、ヒトケミカルの重要な共通点は、生体内で作られている生体を維持するための成分でありながら、20歳を越えた頃からそれら成分の生産量が減少するために、老化現象が現われることにあります。(図1)

図1. エネルギー産生のための三大ヒトケミカルの共通点
図1. エネルギー産生のための三大ヒトケミカルの共通点

その生産量の減少によって、3大栄養素でありエネルギー源である糖質、脂質、タンパク質は効率よくエネルギーに変換できなくなり、その結果、疲れやすくなる、運動能力が低下するなどの老化現象が現われます。それだけではなくエネルギー変換できない事が原因で、脂肪蓄積や血糖値上昇による脂質異常症や、糖尿病など様々な生活習慣病が現われてくることが分っています。言い換えれば、生活習慣病予防、運動能力の再向上、疲労回復力向上のためにもヒトケミカルの摂取が必要なのです。

もともと、体の中で作られているヒトケミカルですが、それらの経口摂取にはそれぞれ問題があります。たとえば、CoQ10は脂溶性物質ですので食前に摂取すると殆ど生体に吸収されないので、胆汁などの消化液が分泌される食後に摂らなければならなく、たとえ食後に摂ったとしても吸収率はごく僅かであることが知られています。その一方で、R-αリポ酸(RALA)は酸性条件で容易に重合化するため胃酸分泌される食後に摂取すると生体内には吸収され辛いので、食前に摂らなければならない、といった問題です。(写真1)

写真1. 胃酸中でのR-αリポ酸(RALA)の重合
写真1. 胃酸中でのR-αリポ酸(RALA)の重合

にもかかわらず、サプリメント製造業者の中には何の工夫も施さずにCoQ10とαリポ酸を同時に配合したサプリメントを製造し、それらの製品が店頭に並んでいます。そして、それらを何も知らない私達消費者は、残念ながらその効能を信じて購入しているのです。

ここで少し脱線しますが、私の研究者としての個人的な歴史をお話しておきます。

最近のことですが、私は大学進学の際に医学分野ではなく化学分野を選んだことに、年齢とともに誇りを持つようになりました・・・・・

高峰譲吉氏が、限られた数の人々を救う医学ではなく、多くの人々を救える化学の道を選んだことは有名ですが、私は高嶺氏とは異なり、ただ単に大学入試において難易度の高い医学部ではなく、当時、比較的に合格しやすかった工学部の化学系を選びました。大学では次第に有機化学に興味を持つようになり、大学院では、有機化学の中でも特に有機合成化学の研究に没頭していました。大学院博士課程終了後はドイツに渡り、ドイツ化学関連企業において医薬品や農薬原料の合成研究をやっていました。そこで、現在では生化学者のDr. ゲーハート・シュミッドに出会い、彼の開発した環状オリゴ糖であるシクロデキストリンを知ることになりました。

現在、私が有機化学の知識の必要なシクロデキストリンの応用研究を行なっているのは、こういった個人的な歴史的背景があります。そして、私の研究グループで得られた知見なのですが、シクロデキストリンは前述のヒトケミカルが持っている経口摂取に関する問題を見事に解決してくれました。

ヒトケミカルの1つであるR-αリポ酸(RALA)はγ-シクロデキストリン(γ-CD)で包接することで酸に対してまったく重合することなく安定化できることが分りました。(図2)胃酸が分泌している胃の中でもRALA-γ-CD包接体は分解することなく胃粘膜へ移行、あるいは、小腸へ移行することができます。そして、胃腸の粘液成分であるアルブミンによってRALAの溶解度は向上し、胃酸が分泌した状態でも、生体内へ効率よく吸収されることが分ったのです。

図2. 酸に対する安定性
図2. 酸に対する安定性

また、もう1つのヒトケミカルであるコエンザイムQ10(CoQ10)もγ-CDで包接することで、72名の健康なボランティアによるヒト試験の結果、未包接体と比較して18倍吸収性が向上することも分りました。(図3)

図3. 各種CoQ10製剤の生体利用能の違い
図3. 各種CoQ10製剤の生体利用能の違い

さらに、吸収性向上のみならず、生体内でCoQ10濃度を高めた状態で1日以上持続することも分りました。食前食後にかかわらず1日に一回摂取すれば、必要な生体内のCoQ10濃度を維持できることになります。(図4)

図4. CoQ10-γ-CD包接体連続摂取による血中Q10濃度上昇(イメージ図)
図4. CoQ10-γ-CD包接体連続摂取による血中Q10濃度上昇(イメージ図)

このように、偶然にもヒトケミカルであるCoQ10とRALAのいずれもγ-CD包接化技術によって吸収性の問題を解決できることが分りました。つまり、食前食後に関係なく1日に1回摂取すれば、CoQ10とRALAを同時に効率よく吸収できるサプリメント製品が開発されたのです。

30歳を越えたアスリート、肌の衰えが気になり始めた中高年、高齢者、生活習慣病患者、そして、それらの予備軍。できるだけ多くの方々にこの吸収性の問題を解決したヒトケミカルサプリメントを飲用してもらいたいと思っています。そして、ひとりでも多くの方々がヒトケミカルで健康的なエイジング(K-エイジング)を目指し、介護の必要のない健康寿命を延ばしてもらいたいという願いから、私は『ヒトケミカルで老いないカラダを作る』という本の執筆に着手しました。