ヒトケミカルとヒトケミカルの組み合わせ(4) CoQ10とRALAの組み合わせによる抗疲労および持久力向上作用、そして、三大ヒトケミカルの組み合わせの総まとめ
このシリーズでは、三大ヒトケミカルの組み合わせによる様々な機能の相乗作用に関する報告を紹介してきました。
(1)では、コエンザイムQ10(CoQ10)とL-カルニチン(LC)による脂肪燃焼促進の相乗作用について紹介しました。
(2)では、LCとR-αリポ酸(RALA)による脂質異常症や高血圧など生活習慣病予防に対する相乗作用について紹介しました。
(3)では、高齢者を対象として、長期入院高齢者のLCとCoQ10の血中レベルが自立している高齢者の血中レベルよりも有意に低いことを示し、高齢者にLCとCoQ10の摂取が必要であることを明らかとした論文を紹介しました。
LCやCoQ10の補給に伴ってエネルギー産生が出来るようになれば、体脂肪の蓄積を抑えられ、筋肉を増強し保つことが出来るようになると考えられ、栄養状態の改善とQOL低下の予防という2つの側面から、LCやCoQ10の積極的な摂取は高齢者にとって有効と思われる結果でした。
ここでは、激しい運動や脳を酷使した時に発生する大量の活性酸素によって生体内の細胞が損傷を受けるわけですが、この時に増加する生理活性たんぱく質(サイトカイン)であるTGFβ(トランスフォーミング増殖因子)が疲労原因物質であり、この物質によって脳は疲労を感じるわけです。そして、疲労の原因であるTGFβの産生は活性酸素の細胞損傷によるものですので、生体内に自らが持っている本来の抗酸化システム(図1)を増強する必要があること、さらには、加齢によって低下するエネルギー産生能力を高める必要があることを説明しました。
その疲労回復のための最も有力な物質が20歳から体内生産量の減少するCoQ10とRALAです。抗酸化作用とエネルギー産生作用の両作用を持つ物質であり、同時に摂取すると両作用の相乗効果もみられる検討結果が得られています。もう一度、簡単に紹介しておきます。
抗酸化作用の相乗効果については、細胞のDNAが活性酸素によって損傷を受けた際に発生する8-OHdGという物質で評価しています。CoQ10とRALAを同時に配合したサプリメントを健常人16名に4週間摂取してもらいました。その結果、尿中の8-OHdGが有意に低下することが確認され、CoQ10とRALAの相乗的な抗酸化作用が示される結果が得られています。(図2)
一方、エネルギー産生作用による疲労回復に対する相乗作用の検証としてはマウス限界遊泳時間の測定を行なっています。21日間、エサにCoQ10とRALAのγ-CD包接体を摂取したマウスは限界遊泳時間を3倍に延ばしています。(図3)
それでは、三大ヒトケミカルの組み合わせの総まとめです。
三大ヒトケミカルはそれぞれ、ミトコンドリアにおいてお互い協力し合って細胞内の活性酸素を除去することで、細胞を保護する役目を持つと同時に、栄養素を代謝してエネルギー産生し、細胞を活性化するために働いています。(図4)
三大ヒトケミカルを組み合わせて摂取すると、筋肉細胞の活性化によって、筋肉を保護・増強し、体脂肪を減らして基礎代謝力を高めます。また、線維芽細胞を活性化することで、コラーゲンやエラスチンなどのタンパク線維やヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などのプロテオグリカン線維を作ることで、皮膚、血管、軟骨、臓器などの組織を若々しく維持します。さらには、骨芽細胞や破骨細胞の活性化によって、骨粗鬆症の予防になります。
このように三大ヒトケミカルは60兆個の様々な細胞を活性化することで、アスリートにはスポーツパフォーマンス向上、中高年にはメタボリックシンドローム対策や美容効果など、そして、高齢者にはサルコペニア対策、ロコモティブシンドローム対策、QOL向上などに役立つことが知られています。
20歳を過ぎたら生体内の三大ヒトケミカルは減少していきます。食事では完全に補えないのでサプリメントで補いましょう。