ミトコンドリアとヒトケミカル(3) 運動してミトコンドリアを増やす|株式会社シクロケムバイオ
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ミトコンドリアとヒトケミカル(3) 運動してミトコンドリアを増やす

私たちの体は運動することで筋細胞はATPを分解(消費)して筋肉を動かしています。日々のトレーニングが運動能力の向上につながっていることは皆さんご存知だと思います。実は、トレーニングによって筋肉量が増えるとともにミトコンドリアも増加することが大きく関わっているのです。
筋肉細胞内のミトコンドリアが増えれば、当然、より多くのエネルギー通貨と言われるATPが作られます。そして、たくさんのATPがあれば、ATPを使って動く筋肉細胞は長時間疲れることもなく動き続けることが出来ます。それが、ミトコンドリアが増加することによる持久力の向上なのです。

では、なぜ運動することでミトコンドリアは増加するのでしょうか?

筋肉細胞では運動によってATP(アデノシン三リン酸)が消費される(分解される)と、一つリン酸が外れて、ADP(アデノシン二リン酸)となります。この時に発生するエネルギーを使ってミオシンという繊維の構造が変化します。ミオシンは一緒にいたアクチンからはなれて、少し先にあるアクチンをつかみ、たぐりよせます。その結果、アクチンが動いて筋肉全体が縮みます。運動はこの筋肉の伸縮なのです。
運動を続けていると、ATPはほとんど消費され、ADPまでも分解されてAMP(アデノシン一リン酸)とリン酸に変換されます。AMPが増えると、筋肉細胞はエネルギーの足りない、いわゆる“飢餓の状態”になります。
すると、このエネルギー不足という情報によって、AMPキナーゼ(AMPK)という蛋白質が働き、PGC1αという蛋白質を活性化して『ミトコンドリアを作れ』という指令を核内遺伝子に与えるのです。
この指令を受けるとミトコンドリア合成のために必要な核内遺伝子がはたらき、ミトコンドリア構成成分のタンパク質やDNAなどを細胞質で作り始めます。そして、既存のミトコンドリアに作られた構成成分に付け足されて、体積が増えていくのです。

有酸素運動によるミトコンドリアの増加
有酸素運動によるミトコンドリアの増加

運動は有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)と無酸素運動(筋トレなど)がありますが、ミトコンドリアの体積を増やすには、有酸素運動の方が好ましいことが分かっています。ただし、有酸素運動を習慣として定期的に行わなければ、1ヶ月も経たないうちに元のミトコンドリアの体積に戻ってしまいます。また、ミトコンドリアの体積は加齢とともに減少していきますので、高齢者は特に有酸素運動が必要で、ウォーキングを心掛けるようにしましょう。

ミトコンドリアを増やすことは過剰な体重を減らすためのダイエットの最も有効な手段とも言えます。ミトコンドリアの増加によって基礎代謝量は上昇します。この基礎代謝量とは、安静にしている時にも使われているエネルギー量のことで、基礎代謝量が多ければ多いほど、運動しなくてもエネルギーが消費されるので太りにくくなるわけです。ミトコンドリアが多ければ、ATP産生のための糖質や脂質の代謝を促しますので、ミトコンドリアを増やすことがダイエットへの近道といえるのです。