難消化性αオリゴ糖のちから（6）悪玉LDLを減らす理由

このシリーズの最終章は（5）だったのですが、2019年5月12日の朝のTBS系のTV番組「健康カプセル！ゲンキの時間」で『脂質異常症』について取り上げていて、わかりやすくLDLコレステロールのことを説明していましたので、その説明を取り入れて、なぜ、難消化性αオリゴ糖が脳梗塞や心筋梗塞の元となる脂質異常症の改善や予防に有効なのかを考察してみました。

まず、番組では『脂質異常症』について説明しています。以前は『高脂血症』といわれていたのに、なぜ、今は『脂質異常症』というか、それは善玉のHDLコレステロールは高い方が好ましいからです。よって、脂質異常症の診断基準は以下になります。

LDLコレステロール：140mg/dL以上
中性脂肪：150mg/dL以上
HDLコレステロール：40mg/dL未満

次にコレステロールの説明です。ヒトの体は60兆個の細胞から成り立っています。この細胞を包んでいる細胞膜の材料がコレステロールです。コレステロールは肝臓で作られ、カラダの恒常性を保つホルモンなどの機能性物質に変換されたり、消化吸収を助ける胆汁になります。コレステロールは血液中で全身に運ばれますが、この運び役がLDLとHDLなのです。LDLはコレステロールを細胞に運ぶ役なのですが、過剰に運んでしまうので、その結果、脂質異常となりますので、『悪玉』と呼ばれ、この過剰に運ばれたコレステロールを回収するのがHDLの役目ですので『善玉』と呼ばれています。

これらLDLとHDLがバランス良く働けば、コレステロールは一定に保たれるのですが、LDLとHDLのバランスが崩れると、つまり、LDLが高くなり、HDLが低くなると、血管に障害が起きて、心筋梗塞や脳梗塞となってしまうのです。

番組ではLDLとHDLのバランスが崩れる要因は食事にあるとしています。食事で摂取する脂は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類に分けられます。そして、飽和脂肪酸は肉やバターなどの動物性脂肪に多く含まれ、LDLを増やし、不飽和脂肪酸は魚やナッツ類に含まれ、摂取しても問題ないとしています。また、HDLを増やすには、禁煙や有酸素運動がいいとも言っていました。

ここで、中性脂肪の値にも注意が必要だと言っています。増えすぎるとLDLを『超悪玉』に変えてしまうとのことです。この『超悪玉』は血管壁に入り込み、プラークができやすく、徐々に成長したプラークは血管を封鎖し、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが上昇するとのことでした。締めくくりとして、中性脂肪の高い人はアルコールや糖質の摂取を控えることが大切だとしていました。なぜなら、アルコールや糖質は肝臓や筋肉・脂肪組織において中性脂肪に変換されてしまうからとのことでした。

このように番組の中では『超悪玉』という言葉を使っていますが、これは、まぎれもなく小型LDLのことです。このシリーズの（4）で難消化性αオリゴ糖を摂取すると小型LDLが減少し、動脈硬化の予防になるという論文を紹介していますが、この小型LDLを減少させるために働く難消化性αオリゴ糖の作用は、まさしく、生体内の飽和脂肪酸量を減らすことにあるのです。

そして、このシリーズの（5）で難消化性αオリゴ糖の飽和脂肪酸の選択的排出に関する作用をお話ししていますが、難消化性αオリゴ糖を摂取すると血中の飽和脂肪酸濃度が減少するという論文が報告されています。

マウスに対して食餌に難消化性αオリゴ糖を混ぜて14週間摂取させたαオリゴ糖群（n=20）と難消化性αオリゴ糖の代わりに等量のセルロースを混ぜて摂取させたセルロース群（n=20）の血漿中の脂肪酸組成の差を調べたところ、αオリゴ糖群の場合、善玉の脂であるオレイン酸、アラキドン酸、DHAなどの不飽和脂肪酸は増加し、悪玉の脂であるパルミチン酸やステアリン酸などの飽和脂肪酸は減少すること、そして、飽和脂肪酸よりもさらに悪玉のトランス脂肪酸も飽和脂肪酸と同様に減少することが明かとなっています。

このように、難消化性αオリゴ糖を摂取して血中の飽和脂肪酸を減少させることが、血中の超悪玉の小型LDLを減少させ、動脈硬化予防、ひいては、脳梗塞や心筋梗塞の予防につながることが明かとなっているのです。

以上、TBS系のTV番組「健康カプセル！ゲンキの時間」で取り上げられた『脂質異常症』についてもう少し詳しい説明を加えました。