腸内細菌による機能性成分からの有益な代謝産物
サプリメントとして摂取したクルクミンは小腸から体内に吸収されるのですが、吸収されなかったクルクミンは大腸に移行し、クルクミンの一部は腸内細菌によって還元され免疫強化に有効でクルクミンよりもさらに抗酸化作用の高いテトラヒドロクルクミンに変換されることが知られています。クルクミン以外にも腸内細菌による機能性成分の代謝に関してはイソフラボンからエクオール、グルタチオンから還元型グルタチオンなど、健康増進に有効な代謝産物が知られています。
クルクミンには脂溶性物質のため小腸内での吸収性は低く、さらには、大腸内でも腸内細菌によって代謝されにくい問題があります。そのために、現在までに、世界的には吸収型クルクミン製剤が5つ開発されており、シクロケムとドイツワッカー社はその5製剤の一つであるカバクルミンを開発しています。この「今、注目していること」ではその5製剤の吸収性に関するヒト試験の結果を比較して、カバクルミンが最も高い吸収性を持つ製剤であることを紹介しています。
高吸収クルクミン製剤の新型コロナ感染患者への効果
高吸収クルクミン製剤であるカバクルミンはクルクミンとしての吸収性が高いだけでなく、腸内細菌によるクルクミン代謝産物であるテトラヒドロクルクミンの体内への吸収性も高いことが明かとなり、シクロケムとドイツワッカー社は共同で「クルクミンのγ-オリゴ糖包接体の摂取による代謝産物であるテトラヒドロクルクミンの吸収性向上」に関する論文を投稿し、その論文が2021年3月に機能性食品関連の学術誌に掲載されました。
Enhanced metabolic bioavailability of tetrahydrocurcumin after oral supplementation of a γ-cyclodextrin curcumin complex
C.Hundshammer et al., Journal of Functional Foods 79 (2021) 104410
その内容は以前にこの「今、注目していること」で紹介しています。
還元型クルクミン
ヒト試験の結果、2つの高吸収クルクミン製剤と比較してγ-オリゴ糖包接体製剤によるクルクミン吸収率は最も高いことを明らかにしただけではなく、クルクミンの代謝産物であるテトラヒドロクルクミンの産生量と血漿中テトラヒドロクルクミン濃度も最も高くなることが判明しています。
このことは脂溶性のために生体利用能の低いとされる機能性成分はγオリゴ糖で包接することで成分そのものの吸収性を高めるだけでなく、イソフラボンからのエクオールの生成やグルタチオンの還元など、腸内細菌による代謝促進も期待できると考えられます。