第87回 シクロデキストリンによるトマトの粉末化検討およびリコペンの物性評価|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第87回 シクロデキストリンによるトマトの粉末化検討およびリコペンの物性評価

概要

トマトやスイカに含まれる機能性成分であるリコペン(図1)は、強力な抗酸化作用を持ち、様々な生活習慣病を予防することが知られています。さらにトマトにはリコペンの他にも脂肪燃焼効果のある13-oxo-9, 11-octadecadienoic acid (13-oxo-ODA) も含まれることから1)、トマトは健康に有効な成分を多く摂取することができる野菜といえます。しかし、リコペンは酸化しやすいことや、水への溶解性が低く、生体内への吸収性が低いという問題点があります。また、脂溶性物質のγ-シクロデキストリン(γ-CD)包接体を摂取すると、胆汁酸との相互作用により脂溶性物質が効率よく胆汁酸ミセルに取り込まれ、吸収効率が高まることが知られています(詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第25回第46回第56回および第67回」を参照して下さい)。そこで本研究では、トマト中のリコペンの経口吸収性の向上を目的とし、CDを用いたトマト粉末を作製し、吸収性の指標となる人工腸液へのリコペンの溶解度について評価しました。

図1. リコペンの構造
図1. リコペンの構造

実験

2-1. CDを用いたトマト粉末の作製
トマトジュースを秤量し、その固形分量に対して重量比が1:1になるようにα, β, γ-CDを添加した後、均一になるように混合した。得られたペーストを凍結乾燥することによりトマト-CD粉末を得た。

2-2. トマト粉末中のリコペンの人工腸液への溶解度
各トマト粉末を量り取り、人工腸液を加え37℃で2時間振とうした。その後、遠心分離およびフィルターろ過して得られたろ液中のリコペンをHPLCにより分析した。

結果・考察

人工腸液におけるリコペンの溶解度は、トマト粉末、トマト-α-CD粉末およびトマト-β-CD粉末と比較して、トマト-γ-CD粉末の場合で高いリコペンの溶解度が示された(図2)。よって、γ-CDを用いることでトマト中のリコペンの経口吸収性が向上することが示唆された。
同様の結果についてスイカ-γ-CD粉末の場合でも期待できる。

図2. 人工腸液におけるトマト粉末中のリコペンの溶解度
図2. 人工腸液におけるトマト粉末中のリコペンの溶解度

まとめ

トマト-γ-CD粉末およびスイカ-γ-CD粉末は、高い吸収性が期待できるリコペン含有素材として、新たな健康食品・飲料の開発にご利用いただけます。

参考文献

1) Haruya T. et al., Bioscience Biotechnology and Biochemistry, 75 (8), 1621-1624 (2011).