第95回 α-シクロデキストリン摂取による便秘・便臭の改善|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第95回 α-シクロデキストリン摂取による便秘・便臭の改善

概要

食物繊維の摂取は便通を改善することはよく知られています。水溶性食物繊維は水分を保持する性質を持っているため、水溶性食物繊維の摂取は糞便中の水分量を上げ、糞便のかさを増加させ便秘を改善します。また水溶性食物繊維は腸内細菌によって短鎖脂肪酸(SCFAs)に分解され、このSCFAsは排便を促す大腸の蠕動運動を活発化させることが知られています。さらに水溶性食物繊維は乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増やす作用をもっています。このような、腸内細菌の改善や糞便の滞留時間の減少により、糞便臭の原因となるインドールなどの腐敗産物量を減少することが知られています。
α-シクロデキストリン(α-CD)は水溶性食物繊維の一つで、難消化性かつ腸内細菌のエサとなる性質を持っています。実際に、当社ではこれまでにラットやマウスにおいて、α-CDの摂取が腸内細菌層を改善し、盲腸内のSCFAs量を増加させることを報告しています。(※詳しくは、当社ホームページの研究成果「第85回」および「第92回」を参照して下さい。)
本研究ではα-CD摂取による便質の改善を目的として、無繊維食と供にα-CDを摂取させたラットにおける糞便量や腐敗産物量への影響ついて、ラクトスクロース(LS)1)を比較対照として検討を行いました。

図1. 腸内細菌由来の短鎖脂肪酸の機能
図1. 腸内細菌由来の短鎖脂肪酸の機能

実験

4週齢の雄性SDラットを無繊維食(NF)群、5.5%α‐CD(α-CD)群、5.5%ラクトスクロース(LS)群、3群に分け、8週間飼育した。(無繊維食は便秘を誘発する食事として知られています。)試験開始から45日目から3日間、糞便を採取した。採取した糞便重量を測定し、糞便湿重量とした。また、得られた糞便を真空乾燥した後に重量を測定して、糞便乾燥重量とした。飼育終了後、イソフルラン麻酔下で解剖を行い、盲腸内容物を採取した。得られた盲腸内容物中の腐敗産物量はGC-MSで分析した。

結果と考察

糞便湿重量はNF群で1.2g/dayであったのに対し、α-CD群では3.4g/day、LS群は1.5g/dayであり、また、糞便乾燥重量はNF群で0.6g/dayであったのに対し、α-CD群では1.0g/day、LS群は0.7g/dayであったことから(図2)、便秘の改善においてα-CDの摂取はラクトスクロースよりも効果的であることが示唆された。

図2. 糞便重量
図2. 糞便重量

さらに盲腸内容物1gあたりの腐敗産物量はNF群で16.7μgであったのに対し、α-CD群では3.1μg、LS群は10.5μgであったことから(図3)、便臭の改善においてもα-CDの摂取がラクトスクロースよりも効果的であることが示唆された。

図3. 盲腸内容物中の腐敗産物量
図3. 盲腸内容物中の腐敗産物量

まとめ

本研究から、α-CDの摂取により便秘・便臭の改善効果が期待されます。加えてこれまでにもα-CDの摂取によるSCFAsの産生を介した肥満予防効果3)や骨強度の増加および腸管免疫増強作用などが知られていることから、α-CDは新たな健康食品の開発において非常に有用な素材であることが示されました。
(※詳しくは、当社ホームページの研究成果「第92回」、「第93回」および「第94回」を参照して下さい。)

参考文献

1) Koh A., et al., Cell, 165:1332-1345 (2016).
2) Hara H., et al., Bifidobacteria Microflora, 13(2):51-63 (1994).
3) Nihei N., et al., BioFactors, 44:336-347 (2018).