精力維持と増強のための機能性素材(2)クリルオイル&カルニチン|株式会社シクロケムバイオ
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精力維持と増強のための機能性素材(2)クリルオイル&カルニチン

~脳機能改善に有効なクリルオイルは生殖機能にも効力あり!CoQ10やL-カルニチンの併用でさらなる生殖機能改善効果~

前回は、R-αリポ酸が『血管の病』である勃起障害(ED)に対して治癒効果のあることを示しました。もう一つ、生殖機能の改善に、大変有効な機能性物質があります。それは、クリルオイルです。

以下の記事では、クリルオイルを脳機能改善のための栄養素として紹介しております。
脳機能改善のための栄養素について(3)クリルオイルの有効性

そこで、まずは、クリルオイルがイワシオイルなどの魚油とどう違うのか、についてのおさらいから入ります。

魚油もクリルオイルも脳機能改善に有効なDHAやEPAなどのn-3系不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)を含んでいる点では同じです。しかし、魚油は水に溶けにくい脂溶性のトリグリセリドですが、クリルオイルはそのようなn-3 PUFAがリン酸とともに結合したリン脂質であり、疎水性と親水性の両方を持つ両親媒性なのです。よって、生体内においてリン脂質は、トリグリセリドに比べて細胞間、細胞膜内外での物質移動がスムーズであり、n-3 PUFAはリン脂質の形態で血液脳関門を通過することが知られていることから、物質の構造上、魚油に比べてクリルオイルの方が脳機能向上効果は高いのです。

リン脂質の構造を持つクリルオイルには、精子形成に関する効果も高いことが示された日本水産(株)の研究グループの報告があります。(その前に“精子”についての勉強です。コラム①コラム②をご参照ください)そもそも、哺乳動物の精液や精子にはリン脂質結合型DHA(以下、DHA-PL)が多く含まれています。そして、精巣中のDHA-PLが精子形成に関わっていることは知られていました。そこで、10ヶ月齢(加齢)の雄マウスを用いてDHA-PLを含むクリルオイル、DHA-PLを含まないイワシオイル、大豆リン脂質、イワシオイルと大豆リン脂質の混合物を餌に混ぜて5週間投与した4群にそれらの脂質を混ぜていない餌を5週間与えたコントロール群を合わせて5群の成熟精子数を評価しました。その結果、イワシオイル群を除くリン脂質を含む3群は何れも有意に精子数が増加していましたが、中でも、クリルオイルが最も高い活性を有していることが判明しました。

図1. 成熟精子数の比較
図1. 成熟精子数の比較

尚、CoQ10摂取によって、精液中の抗酸化能力が向上して不妊患者の精子が活発になり、妊娠しやすくなるという報告は下記の記事で紹介していますので、ご参照ください。CoQ10摂取の場合は女性にも有効で、卵巣機能の向上により、高齢で不妊に悩む女性も妊娠しやすくなる報告も紹介されています。
不妊に悩む夫婦に朗報?夫婦ともにコエンザイムQ10摂取で不妊解消!

精子の減少は性欲の減退、男性の生殖能力の低下を意味し、男性が原因による不妊の可能性が高くなります。精子数を増加させるためにクリルオイルだけではなく、L-カルニチン投与も有効であることがCostaらの報告によって明らかとなっています。L-カルニチンは精子の中に含まれており、R-αリポ酸とともに精子のミトコンドリアにおけるエネルギー産生に重要な役割を果たしています。また、精液中のL-カルニチン濃度は、精子の質と密接に関連しています。臨床試験によって、3~6ヶ月間、L-カルニチン1~4g/日を補給すると、精子濃度、精子数、高運動性精子の比率が向上することが判明しました。

クリルオイルの話に戻ります。日本水産(株)の研究グループはクリルオイル投与によって精液中の精子数が増加すると、性欲の減退に対する改善もみられ、ペアリングから交尾行動にいたるまでの時間も短縮されることを老齢マウスと若齢マウスを用いて明らかとしています。若齢群では、早い時間に交尾にいたる固体が多いのに対し、老齢群では長い時間を要する個体が多いのですが、クリルオイルを摂取すると摂取量に応じてその時間を短縮されていました。

図2. 交尾潜伏期の進行状態
図2. 交尾潜伏期の進行状態

また、マウンティング(腰に乗る)行為の回数もクリルオイル摂取群で有意に増加していました。

図3. マウンティング(腰に乗る)行為回数の比較
図3. マウンティング(腰に乗る)行為回数の比較

コラム①:3億の中から選ばれる精子とは

健康な男性は、1度に2億から3億の精子を供給しています。3億の精子のうち、卵子にたどり着き、受け入れられるのはたった一つです。選ばれた精子と卵子が受精して一つの細胞になり、受精から約280日後に赤ちゃんとなって生まれてきます。3億の中でどれが受精するかは、まったくの偶然です。卵子に向かう旅の途中で、粘液にとらわれ身動きできなくなる精子や卵子のいない方向に向かう精子、卵子に到達しながらもわずかの差で中に入れない精子、と実にさまざまで、偶然の積み重ねによるドラマがそこにあり、3億分の1の確率で選ばれた精子と卵子から私たちは生まれてきたのです。

コラム②:精子の形、そして、射精頻度と不妊の関係

長さは0.02mmで人体細胞の中では比較的小さな細胞です。まず、尾は細い糸のたばでできていて、その糸のたばが巧みに伸び縮みして尾を動かしています。精子の尾の運動にスイッチが入るのは射精されて体外にでた瞬間からです。首にはエネルギー貯蔵庫のコイルである糖分を含んだミトコンドリアが巻かれています。ミトコンドリアは糖分を使ってエネルギーを作り、尾を動かして、卵子までの長い旅に利用します。通常の細胞と違ってミトコンドリア(エネルギー工場)は細胞の外にあり、活性酸素にさらされている状態にあります。そこで、生まれてきた精子はなるべく早く対外に射精するのが好ましいと考えられます。つまり、長期に保存するとミトコンドリアの活性が落ちた老齢精子が多くなりますので、不妊の可能性も高くなります。