スキンケアのための科学(2) 毛細血管を維持してシワたるみ防御
いつまでも若く美しい肌を保つにはどうしたらいいのか、スキンケアのための科学について『まめ知識』を身につけていきましょう。このシリーズの(1)では色白美人のシワたるみ防御法について解説しました。今回は、シワたるみの原因は外側からの紫外線とともに内側の真皮内に存在する毛細血管のダメージ(老化)も主要な原因であることが判っていますので、如何に毛細血管を蘇らせるかについて的を絞って解説します。
これまでに、ここでは血管のダメージ(老化)による血管の病である認知症と勃起障害(ED)について説明し、何れも、R-αリポ酸を摂取することが大事であるという研究報告を紹介しています。
脳機能改善のための栄養素について(6)R-αリポ酸
精力維持と増強のための機能性素材(1)R-αリポ酸
各種の血管の病を論ずる際、血管の大きさが問題で、EDに関係する陰茎動脈の直径は1~2mmで、脳卒中に関係する内頚動脈の5~7mmや心筋梗塞に関係する心臓・冠動脈の3~4mmと比較すると陰茎動脈が最も細く、EDは動脈硬化で生じる最初の血管の病であると解説しました。
しかしながら、毛細血管は毛のように細い血管で、陰茎動脈よりもずっと細く、その直径は9~10μmです。酸素を運ぶ赤血球は8μmですので毛細血管の中を移動できます。この毛細血管は体の末端まで栄養や酸素を運び(図1の赤色の毛細血管、動脈の終わりの部分)、老廃物を運び出す(図1の青色の毛細血管、静脈の始まりの部分)役目をしています。
老化や生活習慣の乱れ、そして、真皮内の毛細血管に関しては紫外線や紫外線由来の活性酸素によって、血管やリンパ管の壁細胞と内皮細胞の接着には緩みが生じ、それが原因で血管やリンパ管の構造は不安定となることが知られています。その結果、血管内やリンパ管内の酸素を運ぶ赤血球など血漿成分や栄養素、そして、老廃物が血管の外に漏れ出し、血管やリンパ管としての機能は失われていきます。(図2)
血管やリンパ管の壁細胞と内皮細胞がしっかりと結びついている状態が正常な血管です。正常な血管を維持するためにはヒトケミカルのR-αリポ酸やコエンザイムQ10が細胞内のミトコンドリアで補酵素としてエネルギー産生を促し、抗酸化物質として活性酸素を消去する必要があります。
さらに、ヒトケミカルで正常な内皮細胞と壁細胞を維持すると同時に細胞同士をしっかりと結びつけるためには壁細胞が分泌するアンジオポエチンと内皮細胞のTie2受容体が必要です。アンジオポエチンは血管新生のための糖タンパクでTie2受容体に納まると細胞同士はしっかりと結びつくのです。(図3)
ここで、スキンケアのためのまめ知識、シワやたるみの原因と対策です。
真皮に存在する毛細血管の内皮細胞と壁細胞の結びつきが弱くなると、老廃物や水分が漏れ出します。そして、真皮の毛細血管はやがて減少していきます。このことを毛細血管のゴースト化と呼びます。(図4)
毛細血管がゴースト化すると、コラーゲンやエラスチンなどのタンパク線維やヒアルロン酸などのムコ多糖を生産している線維芽細胞に酸素や栄養が届けられなくなり、線維芽細胞も減少することになります。その結果、真皮はコラーゲンやエラスチンを維持することが出来なくなり、肌にはシワやたるみが多くなっていきます。
それを防ぐには内皮細胞と壁細胞から出来ている毛細血管を守らなければなりません。毛細血管を守るためにはアンジオポエチンを増やしてTie2受容体を活性化すればいいのですが、残念ながら壁細胞が紫外線や活性酸素で弱っているとアンジオポエチン量の増加は期待できません。
そこで、最近ではアンジオポエチンの替わりになる幾つかのフィトケミカルが注目されています。シナモン、スターフルーツ葉抽出物、ルイボスティー、ヒハツ抽出物などにそのTie2受容体の活性化作用があることが判ってきました。(図5)
そして、このようなTie2受容体の活性化作用を持つフィトケミカルを摂取するとゴースト化していた毛細血管が再生されシワやたるみが改善されることも明らかとなりました。
ヒトケミカルとフィトケミカルを組み合わせて効率よく血管・リンパ管の老化を防ぎましょう。スキンケアとしてシワやたるみを予防するだけでなく、アイケア、育毛、脳機能改善、ED予防、メタボリックシンドローム対策等、多くの効果効能が期待できます。