株式会社シクロケム
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マヌカハニーとその抗菌物質MGO(食物メチルグリオキサール)(1)

ニュージーランドにのみ自生するマヌカの花から採れたハチミツが「マヌカハニー」

強力な抗菌力をもつマヌカハニーの研究・製造で知られ、世界30ヶ国以上で販売するマヌカへルスニュージーランド(株)CEOのケリー・ポールさんを第4回目のゲストにお迎えしました。(株)シクロケムとは、独占販売契約を結ぶ関係です。今回、マヌカハニーとはどんな製品であり、それを扱うマヌカヘルスニュージーランド社とはどんな企業であるか、そして2つの会社の共通点などをテーマに話しが弾みました。

2008年12月掲載(この記事の内容は取材当時の情報です。)

ケリー・ポールさん

マヌカヘルスニュージーランド(株)CEO

'52年ニュージーランド・テアワムツ生まれ。ニュージーランド国立ワイカト大学卒業。ニュージーランドの酪農、食肉、そしてバイオテクノロジー業界の大手企業において上級管理職として活躍した後、'08年マヌカヘルスニュージーランド(株)設立、CEOに就任。趣味はスカッシュ。なお、マヌカヘルスニュージーランド(株)の商標は会社の価値観を明確に提示し、“人の形”の木の幹は健康で生き生きとした人間を表し、木の中の“ハートの形”は健康のシンボルを示し、“緑の帯”の底部はニュージーランドのクリーンで環境に優しいイメージを表現している。

寺尾啓二

(株)シクロケム代表取締役 工学博士 

'86年京都大学院工学研究科博士課程修了。京都大学工学博士号取得。専門は勇気合成化学。ドイツワッカーケミー社ミュンヘン本社、ワッカーケミカルズイーストアジア(株)勤務を経て、'02年(株)シクロケム設立、代表取締役に就任。東京農工大学客員教授、日本シクロデキストリン学会理事、日本シクロデキストリン工業副会長などを兼任。趣味はテニス。

ニュージーランドの特定の土地から採れる「マヌカハニー」には、特別に強い抗菌力が

寺尾: ニュージーランドでは、“ハチミツの王様”とも称されるマヌカハニーですが、日本ではまだ馴染みが薄いというのが実情です。まずは、簡単に紹介していただけますか。

ポール:「マヌカ」はニュージーランドにのみ自生するフトモモ科の低木(学名はLeptospermum Scoparium)です。先住民のマオリ族は“癒しの木”、“復活の木”と呼んで親しみ、マヌカの葉を煎じて薬草として飲用したり、外傷の治療薬として利用したりしてきました。なお、マヌカの木は12月頃(ニュージーランドは南半球の国なので、夏季に当たります)、およそ4週間だけ、白やピンクの可憐な花を咲かせます。私どもが養蜂を行なっている山々は、人間がほとんど立ち入らない自然がそのまま存在するような場所ですが、開花の季節にはマヌカの白い花で覆われ、遠目にはまるで雪山のように見えるほどです。このマヌカの花から採れるハチミツが「マヌカハニー」です。

寺尾:私たち人類は大昔からハチミツを愛用してきており、スペイン東部に残っている1万年以上前の旧石器時代の壁画からも、ハチミツを食用や薬として珍重してきたのがわかります。また紀元前350年、アリストテレスがハチミツを治療薬として使用していたことが記録に残っています。

ポール:ニュージーランドの養蜂の歴史はそれほど古くなく、1800年代、ヨーロッパからの移住が始まったのにともない、養蜂も伝わり、ハチミツがつくられるようになりました。そんななか、マヌカから採ったハチミツが傷や火傷、風邪の症状の緩和、胃の痛みの改善などによく効くことが知られるようになっていったのです。それを裏付けるように1980年代後半、ピーター・モーラン博士率いるニュージーランド国立ワイカト大学生科学研究所の治療用ハチミツ研究チームが、「マヌカハニーの効用が科学的に立証され、しかもニュージーランドの特定の土地から採れるマヌカハニーには、特別に強い抗菌力がある」ことを明らかにして、大きな話題を集めました。

寺尾:そして2008年1月にはついに、ドイツのドレスデン工科大学食品科学研究所のトーマス・ヘンレ教授が、この抗菌作用をもたらす生理活性物質の正体を突き止め、それがMGO(食物メチルグリオキサール)であることを示した論文を発表するに至ったというわけですね。こうしたマヌカハニーの抗菌性に関する各種の研究成果については、次回のサイエンストークで詳しく取り上げて行きたいと思います。

ポール:ひとつだけ念を押して置きますと、MGOを含むマヌカハニーは、“特定の土地から採れる”という点がひとつのポイントになります。つまり、ニュージーランドのハニーには2つのタイプがあり、抗菌物質であるMGOが含まれるものと、含まれないものがあるということです(*以後、単にマヌカハニーというとき、MGOを含むものを指します)。MGOを含まないものは美味なテーブルハニーとして愛用されており、そのまま食されたり、料理に使われたりしています。

寺尾:紛らわしいということでいえば、マヌカハニーと語感が似ているものに、カヌカハニーがありますね。

ポール:においも似ています。しかし、このふたつはまったく違うものなので、混同しないように注意してほしいですね。マヌカが4mぐらい成長する低木であり、12月の4週間だけ、ひとつ一つ独立した8~12mmの白い花を咲かせるに対して、カヌカは20mほどの高さまで成長し、9月から翌年2月まで、3~5mmの小さな白い花を枝の先まで群集して咲かせます。そして、何といっても異なるのは、マヌカには花のなかで抗菌成分MGOを生合成する作用があり、一方、カヌカにはそうした作用がないということです。したがって、マヌカハニーはすぐれた抗菌力をもつ貴重なハチミツですが、カヌカハニーはそうした抗菌力は認められません。


科学的エビデンスに基づく製品づくりを。有効性と安全性の点で信頼できる保証を提供

寺尾:マヌカヘルスニュージーランド(株)(以後、MHNZと略します)は2006年8月設立ですから、このヘンレ教授によるMGOの論文が発表される1年半近く前ということになりますね。

ポール:そうです。とはいえ、当時、ヘンレ教授は世界の化学者や生物学者などが集まって研究に取り組んでいるイタリアの「インターナショナル・ワーク・ショップ」で活動しており、MGOに関する研究成果を、私どもの会社設立の前月にすでに発表していました。それで、私はすぐにヘンレ教授に電話をかけて連絡を取り、お互いに協力し合えることを探って話し合いを続けることになったのです。その結果、当社は翌年の4月にMGOの商標登録を取り、5月にヘンレ教授との共同研究をスタートさせました。その成果のひとつが、前述の論文の発表というわけです。

寺尾:そして、この論文発表の5ヶ月後の2008年6月、私ども(株)シクロケムと独占販売契約を結んでいただき、日本においてもMHNZのマヌカハニーの販売が開始される運びとなったわけですね。

ポール:現在、当社の製品は各種のマヌカハニーやプロポリス、ローヤルゼリーなど70種以上におよび、ニュージーランドはもとより、日本や英国をはじめとして30ヶ国以上で、健康関係のショップや薬局、診療所、病院などを通して販売されています。

寺尾:ニュージーランドには、この分野の企業として国際的にも知られ、国内市場をほぼ独占しているともいえる最大手の会社『コンビタ』が存在するわけですが、後発のMHNZとしてはどんな理念を持って事業をスタートさせたのですか。

ポール:わかりやすくいうと、「天然素材を使用し、その効果・効能に関して科学的裏付けのある革新的な製品をつくり、世界の人たちの健康や福祉に貢献したい」というのが、当社の理念の核といえるものです。そのため、MHNZは多くの国々のさまざまな分野での科学者とネットワークをつくり、共同で研究に取り組んでおり、この姿勢こそが、当社の大きな特長であると思っています。

寺尾:エビデンスに基づく製品づくりはまさしく、私ども(株)シクロケムの理念と同じくするものであり、だからこそ、一緒に協力して研究や事業を行なうことが可能であるともいえるでしょう。

ポール:そもそもMHNZが、(株)シクロケムと組んで仕事をしたいと思ったのも、そこなんです。(株)シクロケムが、しっかりしたエビデンスのもとにシクロデキストリン関連の製品を開発していることに注目し、パートナーシップを共有できる会社であると確信しました。

寺尾:2008年3月にお話をいただいて、6月に契約を結んだわけですから、まさしく打てば響くごとくすんなりお互いを理解できたということですね。

ポール:企業にとって最も大切なことは、自社の製品が有効性と安全性の点で信頼できるという保証を提供することだと思います。ですから、安全性の面でも、MHNZは自身で養蜂事業を展開し、誠実な信頼できる養蜂家のグループとの連携により、素材の安定した供給と品質の維持を実現しています。また、MHNZの製造・運営システムの下では、それぞれの製品に対して十分なトレーサビリティー(追跡可能性)が確保されています。これらのシステムはニュージーランド食品安全局(New Zealand Food Safety Authority)によって認定され、そして査察を受けているのはいうまでもありません。もちろん、日本に輸入されるマヌカハニーは、農薬や抗生物質に問題にないことが証明されています。

寺尾:私も、ニュージーランドのMHNZを訪問させていただいていますが、本社はオークランドにあって、製造施設と配送センターはオークランドの南方、車で2時間ほどのテアワムツに、そして養蜂作業は、冒頭で夏には白い花で埋め尽くされるといわれた、マヌカが自生する人里離れた遠方の未開拓の山岳地域で、そのマヌカの花が咲く時期だけ行なわれるているわけですね。ところで、話が前後してしまいましたが、ポールCEOは、MHNZを設立する以前は、どんな仕事に従事されていたかお聞かせください。

ポール:ニュージーランドの酪農品と食肉を扱う大手企業で経営幹部を務めていました。ここで培った国際ビジネス開発のノウハウとマーケティングの経験は、MHNZの経営戦略に大いに活用していけるものと自負しています。ところで、私のおじのドン・ポールは養蜂家であり、ミツバチとは浅からぬ縁があると思っています(笑)。

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