株式会社シクロケム
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抗がんサプリメントとシクロデキストリン(3)

医薬品と漢方薬や抗がんサプリメントを上手に利用することが最善のがん治療法

抗がんサプリメントを使うときに最も注意しなければならないのは医薬品との相互作用。医薬品の効果を損ねるだけでなく、副作用など危険を伴うことも少なくないといいます。正しい知識をもって、利用することが大切です。
一方で、漢方生薬の有効成分とγ-シクロデキストリンの相性の良さは注目に値します。今回のおふたりの話は、漢方薬はγ-シクロデキストリンで包接することで安定性を得て、苦味やニオイの問題までも一気に解消されること、さらに、γ-シクロデキストリンが漢方薬の進化につながるという将来の話まで展開していきました。現在のところ、西洋医学と補完・代替医療を上手に取り入れるのが、がん治療の最善策とのこと。すぐれた抗がんサプリメントの開発のために協力しあうことで意気投合し、今後への明るい希望を残して対談は終わりました。

抗がんサプリメントを摂取する際には医薬品との相互作用に要注意を

寺尾:福田先生は著書『あぶない抗がんサプリメント』(三一書房、2008年)のなかでも、抗がんサプリメントを使うときは有用性だけに目を向けるのではなく、危険性や問題点についてもよく理解しておくことが大切だと書かれています。危険性ということでは、第一に医薬品との相互作用を注意すべきでしょうね。

福田:もちろん、そうなんですが、現実には、医薬品と漢方薬やサプリメントとの相互作用が十分に検討されているとはいえません。これまでに明らかにされていることについては、データベース化されていますし、わかりやすくまとめてあるものとしては私の著書をぜひ参考にしていただきたいと思いますが…(笑)
一例を挙げると、抗うつ作用で知られるセント・ジョーンズ・ワート(西洋オトギリソウ)は薬物代謝酵素のCYP3A4やCYP1A2の肝臓での量を増やすことによって、これらの薬物代謝酵素で代謝される薬剤(シクロスポリン、ジゴキシン、ワルファリンなど)の作用を著しく低減させることが明らかになってきています。イリノテカンのような抗がん剤の効果を弱くすることも報告されています。そのほかにも多くの抗がん剤の効果に影響する可能性が高いので、抗がん剤を使用している患者さんが気分改善のためにセント・ジョーンズ・ワートを摂取することはすすめられません。麻酔薬や抗生物質などの医薬品の効果に影響する心配もあるので、手術の予定のあるときは早めに摂取を中止しておくことが大切です。

寺尾:食品のなかにも、医薬品との相互作用が心配されるものがあるぐらいで、なかなか厄介な問題ですよね。よく知られているのがグレープフルーツ。グレープフルーツにはフラノクマリンという成分が含まれ、薬の血中濃度を上げる作用があるため、グレープフルーツジュースと医薬品とを一緒の飲むと、薬が効きすぎて、危険な副作用が生じる可能性があるとされています。また、血栓ができやすいためにワーファリンという薬を服用している心臓病の患者さんは、納豆が問題とされます。ワーファリンは血液を固める作用をもつビタミンKの働きを抑える薬なので、ビタミンKをつくる働きがある納豆菌を食べないように注意が促されるのです。

福田:がんの種類や治療の状況によっても、使ってはいけないサプリメントがあります。DHAやEPAにしても、過剰に摂取すると血液凝固能の低下による出血の可能性があるので、手術の前や抗がん剤の治療中は過剰な摂取を控えた方が無難です。また、悪性リンパ腫やリンパ性白血病のようなリンパ球系(免疫細胞系)の腫瘍の場合には、抗がん剤による免疫力低下を予防する目的で抗がん剤と併用するのであれば問題ないかもしれませんが、抗がん剤の治療を行なっていないときに免疫力増強作用のあるサプリメントを摂取すると、リンパ球系の腫瘍細胞の増殖を促進する危険性があるので要注意です。この危険性については、医学論文でも警告されています。

寺尾:ケースバイケースでチェックしていく必要がありそうですが、抗がんサプリメントを使うときの基本姿勢としては、どのように考えておくといいのでしょうか。

福田:がんの予防や再発予防が目的の場合、有用性の認められるサプリメントを摂ることは多くの研究報告によって支持されています。ただし、体内に大きながんがあるときや標準治療(手術、抗がん剤、放射線治療)を行なっている場合は、医師に相談して助言や指導を受ける必要があると考えられます。

寺尾:データが少ないということでは、サプリメントの開発会社が提供すべき、その吸収性や安定性、安全性などに対する信頼できるデータや情報が少ないのも問題だと思っています。

福田:医薬製剤を開発する際はそうしたデータもしっかり取るように求められますが、サプリメントの場合はあくまでも食品の範疇ということで、行政機関から厳しく問われないのがネックになっていますね。

寺尾:私どもではサプリメント開発に当たって、天然素材から有効成分を取り出したところから、安定して安全にきちんと体内に吸収され、機能するまでを見届けようということで、そうしたエビデンスを十分に取るようにしています。温度や湿度、酸や熱などの影響をはじめ、他の物質と混合した場合の変化などについてチェックすることは必要不可欠なことだと考えています。

福田:がん患者さんの半数ぐらいがサプリメントを利用しているという調査結果が報告されています。それだけに、経費の問題もあるでしょうけど、サプリメントの業界全体として、エビデンスの提供に力を注いでくれるといいのですが---。さらに言わせてもらえば、がん患者さんに対する倫理的な問題もあって難しいことはわかるのですが、だからこそ、公的な研究機関などで何とか、各種の抗がんサプリメントに対して、ヒトでの臨床試験を行なってほしいですね。そうすれば、医師も患者さんも抗がんサプリメントを適正に、安心して活用していくことができますから。


γ-シクロデキストリンと漢方薬との相性は良好

寺尾:福田先生のクリニックは漢方治療が基本ということでしたが、多くの漢方薬に対してγ-シクロデキストリンとの相性のよさが確認されています。つまり、γ-シクロデキストリンの空洞部分は、漢方サイズというか、漢方薬の代表的な有効成分トリペルテンなどのサイズにぴったり合うことがわかっています。漢方薬をγ-シクロデキストリンで包接することで、安定性を保持するだけでなく、苦味やニオイなど飲みにくさの問題もすんなり解決することができます。

福田:漢方でも苦味やニオイを軽減するように工夫されてきており、甘みを付けるために甘草を使ったり、むかつきを解消するために生姜を入れたりします。それにしても、γ-シクロデキストリンで包接すれば、こうした味やニオイの問題が一気に解消できるのは素晴らしいですね。「すぐれた有用性が認められ、ぜひ試してみたいのだけれど、苦味が強くてどうしても飲めない」といった人の悩みが、これで簡単に解決できるわけですから。もちろん、漢方薬を煎じるときのあの独特のニオイが好ましく、精神を安定させてくれるという患者さんも少なくありませんから、ものによっては、それこそ包接する割合を「さじ加減」で調整することが必要なケースもあるでしょうけど。

寺尾:そういえば、私がシクロケムを設立する以前、ワッカーケミカルズイーストアジアに勤務していた時代のことですが、漢方薬的体裁の正露丸や龍角散などをγ-シクロデキストリンで包接してはどうか提案しようと思ったことがありました。しかし、製剤化するとなると、新規な製品として臨床試験からやり直さなければならず、20~30年を要することになり、その莫大な費用のことなどを考え合わせると踏み込めませんでした。

福田:医薬品の開発にはともかく時間と費用がかかりますからね。

寺尾:最近、製品名は忘れましたが、テレビCMで、子どもが薬を服用するときにゼリーと一緒に摂って、「お薬、飲めたよ!」と喜んでいるのをみて、“アァ、この方法があるな”と閃きました(笑)。新たに製剤化しようとするから難しいのであって、薬と食品(シクロデキストリン)として別々な製品を一緒に摂るようにすればいいのだと。飲みにくい漢方薬もγ-シクロデキストリンの粉を少し加えて飲むだけで、苦味やニオイなどは瞬時に解消されます。

福田:中国で植物や動物、鉱物などの生薬を紹介した『神農本草経』が著されたのが2000年前のことです。こうした昔からある生薬を使って、薬効を高めるための組み合わせを考え、漢方治療は綿々と受け継がれてきているわけです。私は西洋医学と東洋医学の両方の研究に携わっていた関係もあるのでしょうが、漢方薬も歴史を大切にしながら、もっと自由に抽出効力を高めたり、吸収力を促したり、薬効を向上させたり、飲みやすくしたり、といった進化を考える必要があるだろうと思っています。生薬を細かく刻んだり粉砕して表面積を広くすれば煎じる時の薬効成分の抽出効率を高めることができます。漢方薬の薬効成分の吸収を高める方法は今まで無かったのですが、γ-シクロデキストリンによる分子サイズの包接化は薬効成分の吸収を高める手段として有効だと思います。その点からも、γ-シクロデキストリンという物質はたいへん興味深いですね。

寺尾:医薬品よりも、漢方薬のほうが得意とする分野のあることもわかってきているわけですから、そうした漢方薬の進化は時代の要請ともいえるのではないでしょうか。

福田:西洋医学がお手上げの難病や不定愁訴などは、漢方薬のほうが効果的な場合があり、まさに得意とする分野でしょうね。西洋医療と漢方医療のそれぞれのいいところを、いいとこ取りして、治療に役立てられるようなシステムが普通に利用できるようになるのが、いちばん望ましいことだと思っています。

寺尾:福田先生のクリニックはがんの補完・代替医療が専門ですが、どんな病態の患者さんが多いんですか。

福田:開業して9年になりますが、患者さんの3分の1はがんの治療中、もう3分の1は再発予防、そしてもう3分の1は西洋医学での治療法がないケースというように大別できます。がんの治療中の患者さんの多くは、別の病院で西洋医学の治療を受けており、その効果を高めたり、副作用を改善したりすることを目的としています。また通常、西洋医療では、がんの標準治療が終わると、あとは定期検査だけで、再発が認められたときに改めて治療をするということですから、再発予防の医療を求める患者さんが来院されます。そして、西洋医学に見放された患者さん。西洋医療はがんを縮小したり消滅することが目標ですから、95%不可能と見極めると、そこでもう治療法がないので体力を温存した方がいいという方針に転換するわけです。それに対して補完・代替医療では漢方薬や未認可医薬品、サプリメントなどを活用して症状をよくし良好な状態に改善することが目標ですから、たとえば、食欲を促して栄養状態を高め、体力を向上させるようと努めます。すると、体調がよくなってQOL(生活の質)が高まったり、延命したり、抗がん効果につながったりする可能性が期待できます。最期まで関与していく、それができるのが「全人的治療」ともいわれる補完・代替医療です。

寺尾:オーダーメイドという言葉ひとつでも、西洋医学では患者さんの遺伝子を解析し、その遺伝子の型に合った医薬品を用いることに使うのに対して、補完・代替医療では患者さんの症状の変化に合わせ、そのつど漢方薬やサプリメントなどを変えていくことを意味するわけです。部分でみるか、全体でみるかの違いが歴然としています。

福田:何度も重ねて言うようですが、原因を追究し、その原因を取り除き、病気を治そうとするのが西洋医学であり、体全体の免疫力や自然治癒力を高めようとするのが漢方薬やサプリメントというわけで、両者をうまく利用することが、現在のところ考えられる、複雑怪奇ながんに立ち向かう最善の治療法といえると思います。

寺尾:その意味でも、西洋医学と東洋医学に精通した福田先生の存在は大きいと思います。アシュワガンダの話もあり、抗がんサプリメントの開発に際し、いろいろ協力し合っていけるということで、今後ともよろしくお願いいたします。

終わりに

福田:私のクリニックはがんの補完・代替医療が専門です。標準治療(手術、抗がん剤、放射線治療)の欠点を補ったり、標準治療の効果を高めたり、再発を予防したり、末期の患者さんの症状を改善したりすることを主な目的としています。

寺尾:抗がん物質として知られるαリポ酸。私ども(株)シクロケムは、私たちの体が必要とするαリポ酸R体をγ-シクロデキストリンで包接し、R体の熱や酸に対する不安定性を改善した『αリポ酸R体・γ-シクロデキストリン包接体』を開発しました。

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