5-アミノレブリン酸(5-ALA)
5-ALAは、発酵食品に多く含有している天然に存在するアミノ酸です。
5-ALAはミトコンドリアにおけるエネルギー産生を促す作用を持ち*1、運動効率の改善効果*2や疲労軽減効果*3、肌の潤いを保つ効果*5、6、睡眠の質や気分の落ち込みを改善する効果*7、8を発揮することが報告されています。これらの効果については、5-ALAによって活性化された細胞がコラーゲンやセロトニン、メラトニンといった生理活性物質の産生量を増やすことなどが関与していると考えられています。
さらに、5-ALAは赤血球の鉄結合部位であるヘムを生合成するための原料にもなっています。ヘムの生合成量が低下すると小球性貧血に繋がりますが*9、5-ALAと鉄イオンを併用し体に効率よくヘム鉄を補給することで貧血に対する予防効果が期待されます。
糖代謝における5-ALAの摂取効果については、食後血糖値と空腹時血糖値の低下作用が報告されています*10、11。なお、そのメカニズムについては5-ALAの摂取によってエネルギー代謝が活性化し、糖の消費が促されていることが関与している可能性があると考察されています。
- 運動効率の改善効果(機能性表示 30mg/日*2)[高齢の方]
- 日常生活で生じる一時的な疲労軽減効果
(機能性表示 30mg/日*3) - ミトコンドリアの増加効果*4
- 肌のうるおいを保つ効果(機能性表示 50mg/日*5、6)
- 睡眠の質(眠りの深さなど)を改善する効果
(機能性表示 50mg/日*7) - 一時的に落ち込んだ気持ちを和らげる効果
(機能性表示 50mg/日*8) - 貧血予防効果*9
- 食後の血糖値上昇を抑える効果
(機能性表示 15~50mg/日*10) - 空腹時の血糖値を低下させる効果
(機能性表示 15mg/日*11(1.8mg/日のクエン酸第一鉄ナトリウムとの併用時の効果として))
*1:Shun-ichiro Ogura et al, BMC Res. Notes, 4, 66 (2011)
*2:Shizue Masuki et al., J. Appl. Physiol., 120, 87-96 (2016)
*3:Fumiko Higashikawa et al., Sci. rep., 10, 16004 (2020)
*4:Chikako Fujii et al., Sci. Rep., 7, 4013 (2017)
*5:鈴木智美ら、薬理と治療、46(5)、811 (2018)
*6:鈴木智美ら、薬理と治療、47(2)、259 (2019)
*7:Michael H. Perez et al., Int. J. Clin. Med., 4, 1-7 (2013)
*8:Rachael K. Aquino et al., Geriatrics (Basel), 3(2), 17 (2018)
*9:Etelvino J.H. Bechara et al., J. Photochem. Photobiol., 7, 100036 (2021)
*10:Beatriz L. Rodriguez et al., Clin. Transl. Sci., 5(4), 314-320 (2012)
*11:Fumiko Higashikawa et al., Nutrition, 29(7-8), 1030-1036 (2013)
原料の詳細情報
5-ALAは、食品に含まれるだけでなく生体内でも生合成されるアミノ酸で、生命活動に重要なヘムを構成する材料です。ヘムは8分子の5-ALAに鉄が配位することによって合成されます。生体ではヘムを原料にして、酸素を運搬するヘモグロビンや筋肉で酸素を貯蔵するミオグロビン、ミトコンドリアでエネルギーを産生する際に必要なシトクロムCなどが作られています。5-ALAを補充することでミトコンドリアを活性化することが報告されており、運動機能改善作用、疲労軽減作用など様々な健康機能が期待されています。
しかしながら、加齢とともに体内での5-ALA産生量は低下することが知られており、サプリメント等で補充することが大切です。
5-ALAの効果についての研究情報
5-ALA摂取による運動機能改善効果
5-ALAは生体のエネルギー産生を助ける作用をもつため、運動機能改善効果が期待できます。運動機能に対する5-ALA摂取の効果についての検証が行われ、2016年に論文発表されています*2。この研究では、試験デザインとして平均年齢65.3歳の女性10名を5-ALA(100mg/日)と鉄を摂取するグループと対照のプラセボを摂取するグループに分けて、7日間摂取させました。摂取する前後に段階的に負荷が強くなるサイクリングテストを実施し、その際の疲労度の指標である乳酸値を検討しました(下図)。その結果、5-ALAと鉄を7日間摂取したヒトでは、サイクリングテスト中の乳酸値は摂取前と比較して有意に低下しました。一方でプラセボではこのような効果は見られませんでした。この結果は、5-ALAと鉄を摂取することで運動機能が改善し、運動効率が上昇したことを示しています。
*2:Shizue Masuki et al, J Appl Physiol, 120, 87-96 (2016)を改変
5-ALA摂取による疲労軽減効果
5-ALAは生体のエネルギー産生を助ける作用をもつため、日々の生活における疲労軽減効果が期待できます。
疲労に対する5-ALA摂取の効果についての検証が行われ、2020年に論文発表されています*3。この研究では、試験デザインとして日常的に疲労を感じている20-60歳の健康な男女70名を5-ALA(30mg/日)と鉄(3.6mg)を摂取するグループと対照のプラセボ(鉄3.6mgを含む)を摂取するグループに分けて、8週間摂取させました。摂取してから0, 4, 8週目に疲労度を示すアンケート(VAS)を実施し、被験者の疲労度を検討しました(下図)。その結果、プラセボを8週間摂取したヒトでは摂取0週目と8週目で(A)全体的な疲労感および(B)仕事による疲労感に変化はありませんでしたが、5-ALAを8週間摂取したヒトでは、摂取0週目と8週目で(A)全体的な疲労感および(B)仕事による疲労感で有意な低下がみられました(下図)。
*3:Fumiko Higashikawa et al, Sci rep, 10, 16004 (2020)を改変
5-ALA摂取によるミトコンドリア量と筋肉量の増加
5-ALAはミトコンドリアにおけるエネルギー産生時の重要物質であるヘムやシトクロムcの材料であるため、運動パフォーマンスの増加が期待できます。
運動時に筋肉はたくさんのエネルギーを消費するため、エネルギーの生産効率を高める必要があります。ミトコンドリアはエネルギーを産生する器官であり、ミトコンドリア量の増加はエネルギー産生効率を増加させ、運動パフォーマンスを増加させます。
5-ALAの摂取はミトコンドリア量を増加させ筋肉量を増加させることが報告されています*4。この研究では、マウスを用いて、16週間、5-ALAと鉄を与え、筋力、筋肉量、筋肉中のミトコンドリア量を検証しています(下図)。その結果、5-ALAを摂取することで、握力増加しました(下図A)。また5-ALAを摂取することで大腿四頭筋やヒラメ筋の筋量及びミトコンドリア量が増加しました(下図B, C)。
*4:Chikako Fujii et al, Sci rep, 7, 4013 (2017)を改変