還元型コエンザイムQ10包接体
コエンザイムQ10（CoQ10）は、細胞のミトコンドリアに存在する補酵素であり、肉類や魚介類、大豆油などに含まれています*1、2。
CoQ10は生体内においてエネルギーの産生に関与するヒトケミカル（ヒトの生体内で作られている生体を維持するための機能性成分）の1つです*3。
CoQ10には酸化型CoQ10であるユビキノンと還元型CoQ10であるユビキノールの2種類が存在します*4。ユビキノンは体内のミトコンドリアの電子伝達系で補酵素としてエネルギー産生を促します。そして、エネルギー産生に関与したユビキノンはユビキノールに変わります。その後、ユビキノールは活性酸素を消去する抗酸化物質として働き、再びユビキノンに変わります。
このように、CoQ10は酸化型のユビキノンと還元型のユビキノールがそれぞれの機能を発揮しながら相互変換を繰り返すことで、体の健康を維持する、いわゆる生体恒常性（ホメオスタシス）における重要な役割を果たしています*5、6。
なお、体内の総CoQ10量（酸化型CoQ10と還元型CoQ10の合計）は20歳をピークに加齢によって低下しますが*7、それとともに総CoQ10に対する還元型CoQ10比率も低下することがわかっています*8。
還元型CoQ10は酸化されやすく産業的な利用が難しかったため、昔はCoQ10と言えば酸化型しかありませんでしたが、2000年代以降には還元型CoQ10の工業生産が可能になり、現在では健康食品やサプリメント、化粧品などに利用されるようになりました。
還元型CoQ10の主な特徴として、酸化型CoQ10と比べて抗酸化作用と吸収性が高いことが挙げられます。
還元型CoQ10は抗酸化作用を持つことが特徴的であり、その摂取効果については、日常の生活で生じる一過性の身体的・精神的な疲労感の軽減効果*9～11、QOLの改善効果*9、11、職業ストレスの低減効果*10、口腔免疫能の向上効果*11、口の潤いの維持効果*12、睡眠の質の改善効果*13、運動パフォーマンスの向上効果*14、肌の潤いを保つ効果*15、認知機能の維持効果*16などが報告されています。
また、温泉療養とともに還元型CoQ10の摂取によって新型コロナ感染症（COVID-19）の後遺症の改善に効果的とされています*17、18。COVID-19患者やその後遺症患者では血小板のミトコンドリア機能障害や体内のCoQ10濃度の低下が見られており、CoQ10の摂取によって低下したCoQ10濃度を補完することが症状の緩和にあたって重要であると考えられています。
還元型CoQ10包接体は、環状オリゴ糖（γオリゴ糖）を用いて還元型CoQ10を包接※した製品です。包接体にすることで還元型CoQ10の酸化安定性や吸収性の改善が期待できます。
環状オリゴ糖の空洞に有効成分が取り込まれることを包接、環状オリゴ糖に有効成分が取り込まれたものを包接体と言います。
- 日常の生活で生じる一過性の身体的・精神的な疲労感の軽減
（機能性表示 還元型CoQ10として100mg／日*9、10）［高齢の健常者］ - QOLの改善
（機能性表示 還元型CoQ10として100mg／日*9）［高齢の健常者］ - 職業ストレスの低減
（機能性表示 還元型CoQ10として100mg／日*10）［健常女性（看護師）］ - 口腔免疫能の向上効果
（機能性表示 還元型CoQ10として150mg／日*11）［中高齢の健常者］ - 口の潤いの維持効果
（機能性表示 還元型CoQ10として100mg／日*12）［中高齢の健常者］ - 睡眠の質の改善
（機能性表示 還元型CoQ10として100mg／日*13）［ストレス度の高い健常者］ - 運動パフォーマンスの向上
（機能性表示 還元型CoQ10として300mg／日*14）［健常なアスリート］ - 肌の潤いを保つ効果
（機能性表示 還元型CoQ10として300mg／日*15）［健常人女性］ - 認知機能（記憶力、注意力、情報処理能力）を維持する効果
（機能性表示 還元型CoQ10として300mg／日*16）［中高齢の健常者］） - 新型コロナ感染症の後遺症改善効果
（温泉療養も合わせた効果として、（200mg／日*17、18））
- 吸収性改善
- 安定性改善
*1：Hiroshi Kubo et al., J. Food Compos. Anal., 21, 199-210 (2008)
*2：藤井健志, 日本家政学会誌, 63(4), 205-207 (2012)
*3：寺尾啓二, 健康・化学まめ知識シリーズ9 ミトコンドリアとヒトケミカル, 健康ライブ出版社 (2019)
*4：William V. Judy, Integrative Medicine, 20(6), 24-28 (2021)
*5：David Mantle et al., Antioxidants, 9(5), 386 (2020)
*6：David Mantle et al., Int. J. Mol. Sci., 25(12), 6765 (2024)
*7：Anders Kalén et al., Lipids, 24(7), 579-584 (1989)
*8：Hiroo Wada et al., J. Am. Geriatr. Soc., 55(7), 1141-1142 (2007)
*9：出口祥子ら, 臨床医薬, 24(3), 233-238 (2008)
*10：Kawaharada Y. et al., 薬理と治療, 41(12), 1129-1137 (2013)
*11：清水和弘ら, 日本補完代替医療学会誌, 12(1), 37-43 (2015)
*12：Ryoko Ushikoshi-Nakayama et al., PLoS One, 14(4), e0214495 (2019)
*13：Morikawa H. et al., 薬理と治療, 47(8), 1231-1244 (2019)
*14：Dietmar Alf et al., J. Int. Soc. Sports nutr., 10, 24 (2013)
*15：守川英幸ら, 薬理と治療, 51(4), 551-562 (2023)
*16：木下徹ら, 薬理と治療, 49(10), 1739-1747 (2021)
*17：Zuzana Sumbalová et al., Front. Mol. Biosci., 9, 1016352 (2022)
*18：Jarmila KUCHARSKA et al., Bratisl. Med. J., 124(2), 89-96 (2023)