鉄分
鉄分は赤血球の中で酸素を運搬する役割や、各種酵素の構成成分としての役割がある微量ミネラルです。鉄分の欠乏は貧血、運動機能の低下、認知機能の低下などの原因となります*1。
1日の摂取推奨量は、成人男性でおおよそ6mg/日、成人女性で5mg/日とされています。また、1日の摂取推奨量に加えて、月経中の女性は4mg/日、妊娠中(中・後期)の女性は10mg/日を追加摂取することが推奨されています*1。
代表的な食品100g中に含まれる鉄分の量を比較すると、レバー9mg、アサリの水煮缶30mg 、干しエビ15mg 、青のり77mg、カシューナッツ4.8mg、小松菜2.1mgとなっています*2。
動物性の食品に含まれる鉄分はタンパク質と結びついている“ヘム鉄”、また植物性食品に含まれる鉄分はミネラル分(無機塩類)である“非ヘム鉄”として存在しています。ヘム鉄の吸収率は摂取量の20~35%、非ヘム鉄の吸収率は摂取量の1~15%と言われています*3。そのため、鉄分の摂取には食品中の含有量と吸収率の両方が考慮された食事が理想です。
サプリメントで鉄分を補給する場合は、ヘム鉄、非ヘム鉄、どちらの鉄分なのか表記に注意して使い分けると良いでしょう。
非ヘム鉄の吸収率の低さは食べ合わせで改善されることがあります。ビタミンC(アスコルビン酸)やクエン酸は非ヘム鉄の吸収率を向上させる成分の代表例です*4。
また、5-アミノレブリン酸(5-ALA)と非ヘム鉄を併用することで効率的にヘム鉄として補給でき、全身への酸素輸送効率の向上が期待されます。実際に5-ALAと非ヘム鉄(クエン酸第一鉄ナトリウム)を組み合わせて摂取することによって高齢女性の運動機能が改善されたという報告があります*5、6。
鉄分の耐用上限量は成人男性で50mg/日、成人女性で40mg/日とされています*1。過剰摂取すると嘔吐や下痢などの症状が現れます。また、過剰摂取が長期的に続くと体内に蓄積して臓器の疾病にも繋がります。サプリメントを利用する場合は食事から摂取される鉄分量との兼ね合いを考え、摂りすぎに注意しましょう。
- 運動能力の向上(全身への酸素供給量の向上効果に因る)
- 学習能力・記憶力の維持・向上(脳への酸素供給量の向上効果に因る)
- コラーゲンの生成(肌質・髪質の改善)
- 貧血の予防
*1:厚生労働省, 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
*2:文部科学省, 「日本食品標準成分表(2020年版 八訂)」第2章
*3:European Food Safety Authority, EFSA Journal, 8(4), 1585 (2010)
*4:Birgit Teucher et al., Int. J. Vitam. Nutr. Res., 74(6), 403–419 (2004)
*5:Shizue Masuki et al., J. Appl. Physiol., 120, 87–96 (2016)
*6:Yasuko Ichihara et al., Experimental Gerontology, 150, 111356 (2021)