イミダゾールジペプチド(イミダゾールペプチド、イミダペプチド)
バレニン、カルノシン(L-カルノシン)、アンセリン
イミダゾールジペプチドは、バレニン、カルノシン、アンセリンなどからなるジペプチドであり、イミダゾールペプチド、イミダペプチドとも呼ばれています。イミダゾールジペプチドはヒトの体内では骨格筋や脳に多く含まれており、食品では鶏むね肉などに多く含まれています*1。
骨格筋中のカルノシン濃度が高いほど運動中に発揮されるパワーが高くなる傾向が確認されていますが*2、イミダゾールジペプチドの摂取によって骨格筋中のカルノシン濃度が上昇し、同時に運動パフォーマンスが向上することが報告されています*2~4。また、イミダゾールジペプチドには運動中の疲労軽減効果*4、日常生活での疲労感の軽減効果*5、6が報告されています。疲労軽減効果については抗酸化作用が関与していると考えられています。
イミダゾールジペプチドの一種であるカルノシンとアンセリンの摂取は記憶力の低下を抑制することが報告されています*7。この作用については、抗炎症作用や、加齢による脳血流量の低下を抑制する作用が関与していると考察されています。
さらに、イミダゾールジペプチドの一種であるアンセリンには肝臓で尿酸を生産している酵素(キサンタンオキシダーゼ)の働きを阻害する作用があり*8、高めの尿酸値を低下させる効果が確認されています*9。
- 運動パフォーマンスの向上効果*2~4
- 運動中の疲労軽減効果*2
- 日常生活で生じる疲労感やストレスを軽減する効果
(機能性表示 400mg/日*5、6)[身体的・精神的な疲労を感じている方][中高年の方]
- 記憶力を維持する効果
(機能性表示 アンセリンとして750mg、
カルノシンとして250mg/日*7)[加齢による記憶力の低下が気になる中高年の方]
- 尿酸値の上昇を抑える効果
(機能性表示 50mg/日*9)[尿酸値が高めの方]
*1:西谷真人ら, 日本補完代替医療学会誌, 6(3) 123–129 (2009)
*2:Yasuhiro Suzuki et al., Japanese Journal of Physiology, 52, 199-205 (2002)
*3:佐藤三佳子ら, 体力科学, 52, 255-264 (2003)
*4:鈴木康弘ら, 体育学研究, 49(2), 159-169 (2004)
*5:清水惠一郎ら, 薬理と治療, 37(3), 255-263 (2009)
*6:青柳さやから, 薬理と治療, 36(3), 213-224 (2008)
*7:Tatsuhiro Hisatsune et al., J. Alzheimer's Dis., 50, 149–159 (2016)
*8:大塚裕介ら, 痛風と核酸代謝, 40(1), 59 (2016)
*9:久保村大樹ら, 応用薬理, 94(3/4), 37-42 (2018)
*10:Gerald Münch et al., Brain Res. Rev., 23, 134-143 (1997)
*11:Audrey Baguet et al., Amino Acids, 43, 13-20 (2012)
*12:西村敏英, 「総説カルノシンとアンセリン」, カルノシン・アンセリン研究会
*13:Miwako Mori et al., Biomedical Res. Trace Elements, 26(3), 147-152 (2015)
*14:辻浩司ら, 北水試研報, 74, 25-28 (2009)
*15:田中雅彰ら, 薬理と治療, 36(3), 199-212 (2008)
*16:Guoyao Wu, Amino Acids, 52, 329-360 (2020)
原料の詳細情報
L-カルノシンはβアラニンとヒスチジンで構成されるイミダゾールペプチドの一種です。イミダゾールペプチドは1970年以後からその機能性についての研究が大きく進展し、渡り鳥や回遊魚など、長距離を移動する動物のスタミナ維持に密接に関係していることが判明しています。また、L-カルノシンは長寿に関わっているという報告もあり、比較的長寿の哺乳動物であるヒトの骨格筋には猫や豚などの他の哺乳動物に比べてL-カルノシンが高濃度に保たれています*10。しかしながら、L-カルノシン濃度は加齢とともに減少するため、より高いL-カルノシン濃度を維持するためには積極的に外部から取り入れる必要があります*11。
L-カルノシンは食肉中の特に良く動かされる部位(豚肉ならモモ肉、鶏肉なら胸肉など)に多く含まれています。また、同じく食肉に多く含まれるイミダゾールペプチドとしてアンセリン、バレニンがあり、牛肉や豚肉はL-カルノシン、鶏肉はアンセリン、鯨肉はバニリンの割合が高くなっています*12~14。L-カルノシン(イミダゾールジペプチド)を疲労回復目的で摂取する場合、200~400mg/日が推奨量です*5、15。その他、L-カルノシンには認知症予防やパーキンソン病、自閉症の症状緩和、肥満体質の改善など様々な効果が報告されていますが、これらの効果を目的とする場合の推奨摂取量は500~2000mg/日とされています*16。
*12:西村敏英, 「総説カルノシンとアンセリン」, カルノシン・アンセリン研究会
*13:Miwako Mori et al., Biomedical Res. Trace Elements, 26(3), 147-152 (2015)
*14:辻浩司ら, 北水試研報, 74, 25-28 (2009)
L-カルノシンの効果についての研究情報
L-カルノシン摂取による日常的な疲労の回復効果
L-カルノシンは抗酸化力があるため、疲労の原因となる筋肉中の活性酸素の蓄積を防ぐ効果があります。
L-カルノシンの抗疲労効果を検証する臨床試験の一つとして、「日常の生活でほぼ毎日疲労感を感じている健常者(41±10歳 男女)」約200名を被験者とする試験が行われました。被験者には普段の食生活や運動習慣を変えることなく、イミダゾールペプチド(L-カルノシン、アンセリン混合物)を含むドリンクを1日1回、8週間にわたり継続的に飲んでもらいました。試験開始から8週間後の疲労度に関するアンケート調査(VASテスト)の結果、イミダゾールペプチドを摂取したグループではプラセボグループと比較して、有意に疲労感が軽減することが判明しました*5。
*5:清水惠一郎ら, 薬理と治療, 37(3), 255-263 (2009)
L-カルノシンによる摂取による運動疲労の回復効果
L-カルノシンの摂取により日ごろの疲労の軽減効果だけでなく、激しい運動によって引き起こされる急激な疲労に対しても軽減効果が期待できます。
運動負荷に対するL-カルノシンの抗疲労効果について、次のような検証が行われました。健常者17名(40±12歳 男女)に、1日1回、0mg(プラセボ)または400mgのイミダゾールペプチド(L-カルノシン・アンセリン混合物)を含むドリンクを4週間にわたり飲んでもらい、その後エルゴメーターによる4時間の運動負荷をかけました。運動中および運動後の回復期間の疲労度についてのアンケート調査(VASテスト)の結果、プラセボのグループでは翌日まで運動負荷による疲労が残っていたのに対して、400mg/日のイミダゾールペプチド摂取グループでは運動による疲労度の高まりが緩和され、翌日には疲労が解消されることが示されました*15。
*15:田中雅彰ら, 薬理と治療, 36(3), 199-212 (2008)
L-カルノシンによる持続的運動機能の向上効果
L-カルノシンの抗疲労効果は持続的な運動パフォーマンスの向上に繋がります。
11人の健常な被験者(21±1.4歳 男性)について、骨格筋中のL-カルノシン濃度を測定し、30秒間エルゴメーターを全力で漕いだ時の仕事量(パワー)との相関について報告があります*2。この報告では、筋肉中のL-カルノシン濃度が高い程、30秒間の平均のパワーが高くなるという相関が見られています。以上のことから、骨格筋中のL-カルノシン濃度を高濃度にすることが“持久力のある疲れにくい体”“運動パフォーマンスの向上”のために重要であることがわかります。
*2:Yasuhiro Suzuki et al., Japanese Journal of Physiology, 52, 199-205 (2002)